アメリカンコミックの悪人(ヴィラン)が証人保護プログラムで一般人になった!?
元ヴィランの『ガンスリンガー』は、FBIに他のヴィラン達の情報を売り、
まんまと新しい身分を手に入れ、中学校の歴史教師におさまっていた。
だがそんな授業を行うガンスリンガーを見つめる一人の少女の不思議な視線。
その少女はガンスリンガーの正体を軽々と見抜いてしまう。
少女の正体とは?…そして時を同じく、牧歌的な田舎街に…大量虐殺犯の魔の手が迫っていた!!
A-10さんのマンガ作品「ヴィラン&シュガー」を読みました。ブログタイトルはなんかネガティブなことを言っているように見えますが、こちら作中のセリフからの引用で、実際は非常に面白かったのでみんなにすすめたい。
はじまりの設定こそ、もともと「ヴィラン」側だった主人公のおっさんが、公権力に監視されながら過ごしている、というちょっとひねったものであるが、内容はもうまっすぐの王道で感動しましたね。
ハイパーポップと言っちゃってもいいくらい「こうすれば世のフィクション愛好家は気持ちよくなるんだろ?」と言われているような、適度にひねった展開とまっすぐに素晴らしい演出。1話のみの短い漫画だから出せる、作りこめる良さがひしっと詰まっています。これを読んで本能的に気持ちよくならない人はなかなかいないのではないだろうか。
王道なものを素直に良いと思わせてくれるのは、おそらく何度も考えてああでもないこうでもないと練った所々の演出と、全体のテンポ間や展開の調整でしょうね。ここは時間をかければかけるだけ良くなるということは誰でも知っているのですが、では実行して作品に具現化できるかというとほとんどの場合そうはならないのである。単に面白い作品ではなく、教科書でもあるんですよねこれは。
モチーフはアメコミなのですが、読んでみると意外にも日本のオタクカルチャー風の「カワイイ」の表現があり、第一印象よりはかなり広い範囲におすすめできる作品である。セクシュアルな表現もないです。暴力描写は題材上ちょっとあるので注意。
Kindle版で読みましたが最後のページにはこんなふうな全力宣伝がある。出版社を通したものではなく、同人誌として出たものをKindleでも発売しているという作品のようですね。そしてそんな形態の作品ならではの、作者の宣伝の役割もはしているのが良い。「これとよく似た漫画がもっと長く読めるの? 絶対に読みたい」と思っちゃったものね。