💛~大暮維人・舞城王太郎「バイオーグ・トリニティ」~

 

「穴」は
体じゃなくて「心」にあく…

[第1話]バイオーグ・トリニティ - 大暮維人/舞城王太郎 | 少年ジャンプ+

 一応私は舞城王太郎大暮維人も好きなので、出始めのころは数巻くらい追いかけていたのだけど、いつのまにか読むのをやめちゃっていた「バイオーグ・トリニティ」を最近最後まで読み終えました。マジで面白かった。

 

 べつに昔も面白くないから止めていたわけではなく、このお話(舞城も大暮も典型的な作品はだいたいそうなのだが)、意味が分からないので、途中まで読んでそのあと時間が空いちゃうと「いま何の話してるんだっけ? てかこのキャラふつうにいるけど誰だ?」となり、読む気がうせてしまうのである。

 ただ意味は分からなくても引っ張る力はすごくあるので、一気読みなら読み切れました。もしこの作品知ってるけど昔挫折したよという人がいたら一気読みおすすめですよ。

 

愛を密室に閉じ込めて
一人占めにしないで。

 何が面白いのかというと、原作と作画のこのふたり、どちらも非常に才能があるクリエイターなのですが、その才能の方向性が似ているんですよね。絵と小説、フィールドは違いますが、その基礎的な技術を高い水準で持っていて、そのうえどちらも過剰な書き(描き)込みで知られている。

 シュールだったり奇抜だったりするモチーフを使用することをいとわないところも共通しているし、高尚さではなくポップさを軸に置いた表現をするところもそう。あと、読者に共感というよりは驚きを与えることをゴールにして制作しているところも似ている。

 

 その似ている二人が、おたがいの強みを役割分担しつついかんなく発揮している作品である。ただ発揮されているだけではなく、統一感のあるひとつの作品に収まっていて、傑作だと思います。

 

 ただ、「ループもの」「現実改変能力」「(世界=きみ)とぼく」みたいな、古式ゆかしきセカイ系のストーリーなのだけど、舞城も大暮も、あんまりオタク好みの内向的なキャラを出さない*1ので、最終的に誰のストライクゾーンに入っているのかよくわからない作品になっている、というのはかなりあると思われる。

 

 正直もっと騒がれ語り継がれるべき作品だと思うのだが、最初に述べたわかりにくさと、対象層の不明確さが足を引っ張っている気がする。非常にもったいなく、もっと多くの読者に値する作品だと思うので、もしよかったら読んでみてくださいね。読むときは絶対1週間以上開けないでください。

 

 あと読むときのアドバイスとしては、いま自分が読んでいる文字の向き、どこ向きの文字なのか? を常に意識しておくと中盤以降ちょっと読みやすくなるかなという気がします。

 

おなかペコペコヘリコプター

 

*1:どちらかというとマイルドヤンキーを描くことが多い作家である。キャラ萌え的にもそうで、男女ともに魅力的なキャラばかりなのですがどうも非オタ向けなんですよね。かといってじゃあ非オタにおすすめできるかというとお話や世界観がオタクすぎるという……。