「はじめてのチュウ」のあまり著作権的にお行儀良くないアップロードがYouTubeにあり、その動画のコメント欄のいちばん上に固定されているコメントが最近とても好きである。
「冬に良く見られる筋状の雲、北海道付近」さんが投稿したこのコメントは、「はじめてのチュウ」の歌詞を古い言葉に翻訳したものである。最初みかけたときは特に気にもならず、「みんなこういうの好きだよね。てか、俺はすゑひろがりずでも笑ったことないし笑」などと思っただけだったのだが、もう一度戻ってきて読んでみるとめちゃくちゃ面白かった。
歌詞:初めての接吻
眠れぬ夜、貴公のせいでござろう
先程別れもうした矢先といふのに
オープニングを見るとべつにふつうだし、感動とかしないんですよ。
耳朶から貴公へ、燃えているから貴公へ
やりもうした、やりもうした、感無量でござる
この辺からすぐもう閾値を超えてくる。「耳朶から貴公へ、燃えているから貴公へ」は逐語訳気味でやや意味が取れない*1が、原語を越えたポエジーを生み出している。
そのうえで、「やりもうした、やりもうした、感無量でござる」である。これを想像でメロディーに乗せてみたらだいぶ笑ってしまった。
やりもうした、やりもうした、感無量でござる
最初は敵討ち成功直後の侍かと思った。
初めての接吻、貴公と接吻
“拙者の全身全霊の愛を貴公へ差し上げよう”
何故故であろうか、心中優しさで溢れるでござる
そしてのびやかにサビ。音数詰めこみ気味のヴァースが、むしろ真摯さの表現のように聞こえて、深く胸をうつ。僕もプロポーズするなら「拙者の全身全霊の愛を貴公へ差し上げよう」がいいのではないか。
初めての接吻、貴公と接吻
“拙者の全身全霊の愛を貴公へ差し上げよう”
素敵なリフレイン。
涙が零れ落つる、男子にあるまじき振る舞い
ここ!
ありえん。原曲ではソフトだった倒置がこのバージョンではガツンと効いてくる。原曲のこの部分、ちょっとキザでちょっとダサいんだけど、歌手が侍になった瞬間とんでもない胸キュンフレーズになるなんてだれも思ってなかった。これはほんとうにすごいことです。ここで悶死した人も多いのではないだろうか。
“貴公に惚れもうした”
うわーーーーーー!!!! •ू(ᵒ̴̶̷ωᵒ̴̶̷*•ू) )੭ु⁾ もきゅ~
ここまで信頼に足りる言葉を令和のあいだにあと何回聞くことができるだろうか?
あまりにも好きすぎて「すゑひろがりず」の映像もたくさん見てしまいました。「はじめてのチュウ」の侍歌詞、とてもいいので、みなさんもぜひ脳内で歌ってみて下さい。
*1:これは古語ジェネレーター的なツールに放り込んで作った文章なのかもしれない。