初恋はクラクソンズ

 

 アメリカやイギリスの音楽を好んで聴くようになった大きなきっかけのひとつ*1 が、Klaxonsというバンドを好きになったことである。いま聞き返すと、上京したての大学1年生、あらゆる物事に背伸びをして臨み、臨んだけどいろいろだめで(未成年なのでだめなのだが)結局アルコールにおぼれていたときの感触*2をリアルに思い出せる。

 

 はじめて聞いたKlaxonsは、……キモさとおしゃれさが両方あって、教養の香りがするのにまったく洗練されてなく、というより洗練のもつシャバさを拒否しているような感じがあって、そしてポップセンスとエモーショナルな尖りを持ち合わせていた。いま使ったすべての形容詞が、ティーンエイジの終盤を迎えていた僕の「こうありたいな」というありかたにぴったり決まっていたんですよね。好きだった。

 もちろん今も十分好きなのですが、あえて過去形でいいたい。好きだった。

 

 たとえば、代表曲と言えるのがこの「Atlantis To Interzone」。その当時作っていた製作物に、なんの必然性もないのに引用とかしていた。思い出すと恥ずかしいが、まあでも、分別のない時代に下手に引用するすきなものが、人生を俯瞰してみるといいスパイス、特色点のようなものになっていると思う。

 

 裏声ボーカルにダンスっぽいリズム、……ニュー・レイヴと評論家に名付けられる特徴的な音楽像を持っていて、けっこう名の知れたバンドではある。「Myths of the Near Future」「Surfing the Void」「Love Frequency」という、外連味の伝わってくるネーミングの3つのアルバムを出して、2014年、――僕もちょっと大人になってくる頃にバンドは活動をやめた。

 

 いちばん有名な曲は「Golden Skans」でしょうか。この曲とかかなり宇宙的で、いまの俺から見ても、「昔の俺はこういうの超好きそうだな」と思う限りだ。「うううう・ううううう、うう~」というキモいコーラスもまじでかっこいいし、Bメロの「A hall of records~」の刻む感じのボーカルもかっこいいですね、そしてそのあとに満を持して出てくるキモいメロディーのサビったら最高だよ。

 

 シングルカットされていないものだと、こういう曲とか好きです。2021年ともなると今更感はありますが、いいですよ、Klaxons。ぜひ聞いてみてね。

*1:ほかは、たとえばこれ。Embers and Envelopes - タイドプールにとり残されて

*2:そのまま結局足のつくところには戻れず、ぎりぎり息継ぎを繰り返しながらいまにいたっている。