「ディエンビエンフー」

 

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 西島大介さんというかたが描いたマンガ「ディエンビエンフー」を読んでいた。

 「少女終末旅行」とか「児玉まりあ文学集成」を思い出すような、やわらかくデフォルメされたキャラクターで、「戦闘美少女と無力な僕」的なセカイ系作品や王道のバトル漫画のパロディをしながら、『カチアートを追跡して』くらいのポストモダン度合いでベトナム戦争をテーマにしている。

 

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 作品としては最高クラスに面白い。まったく頼りない戦場カメラマンを視点人物にして、戦闘美少女の萌えを引っ張りつつ「トーナメントバトルとかやっちゃうようなバトルものマンガ」をやって、そのうえでベトナム戦争を、歴史を再構成するようなやり方で取り扱うという取り組みの時点でふつうではないのだが、実際の作品も、意外とキャラクターに感情移入出来たり、個々の場面の突飛な発想に驚いたりと見どころが多い。


 最終的にまとめた形では終わっていないのと、本筋のストーリーラインがそれほどきれいに構成されていないことから、ポップさはまったくなく、それが作品として目指しているものに関して必要な要素であるかと言われれば多分そうでもないのだけど、もしポップさがあったらこんなに無名な作品ではなかっただろうと思う。

 

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 電子書籍で、パソコンの画面で読んだのだけど、こういうふうに画面を横に使う演出がけっこうあるのでけっこう効果的な受け取りかたができる。パソコンだとみにくいような細かい描きこみがある作品ではないので、むしろ横長のディスプレイでこそ映える作品なのかも…? いま手元にパソコンしかないけど、マンガが読みたいなと思うひとはぜひ。

 

 

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クロロホルム
のこり香
うすれていく
意識の中で…

ハートを
撃ち抜かれたんだ。

 絵はデフォルメが強いけれど、表現力自体はかなり高いので、微妙に第一印象で敬遠した人にもおすすめできます。

 また、ベトナム戦争を題材にしていて、たしかに批評的に頑健な作りをけっこうしている作品なのですけど、インテリかというと決して完全にそうとも言えない、見たことのないバランス感覚をしています。かといってもちろん、史実や現実にたいして、踏みにじるようなフィクションにはなっていません。むしろ最大限のリスペクトがされていると思う。

 あと、テキストもうまい。それにちょっとフェチな要素もある。なにより作品としてとにかく類がない。「ディエンビエンフー」を読んだときの感じを「ディエンビエンフー」以外の作品で感じることはいまのところ出来ないでしょう。

 

 とてもおすすめです。

 

おまけ

 今日からしばらくブログにおまけがつきます。おまけの内容は、くもじいとくもみの「空から日本を見てみよう」各エピソードの良かったシーン3選です。

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エピソード1「紅葉の日光」

良かったところ1:一筆書きで龍を書くお土産屋さんの神業。筆さばきで龍の体節を表現するところとてもすごいと思った。

良かったところ2:表札を1分でかくおばあさんがふつうに2分かかってたところ。

良かったところ3:男体山から見た中禅寺湖。この映像が出せる空撮旅番組ってずるい。