タイトルの意味はよく分からなかった~田島列島「子供はわかってあげない」~

 

「KOTEKO、好きなのか?」 
「ああ、かなり」
サクタさん(水泳部)ともじくん(書道部)は学校の屋上で出会った。

子供はわかってあげない|モーニング公式サイト - 講談社の青年漫画誌

 

 というマンガを読みました。非常に面白かった。

 主人公の女の子が、学校の屋上で絵を描いていた(けど書道部の)男の子と出会う。そんなこんなしているうちに、行方をくらました父親や謎の宗教団体、探偵をしているお兄ちゃん(でも外見は女)などが登場し、物語は不思議な方向へ進んでいく。そして最終的には、ふたりがすこし大人になって終わるガール・ミーツ・ボーイのお話である。

 

 癒されるような絵のタッチと同じようにストーリーも非常にピュアです。キャラクターどうしのかけ合いや、セリフの調子が面白く、ちょっと長めのお笑いコントを見ているみたい。

 ただ意外なくらい物語はけっこう動き、……劇的な引きや回しがあるわけではないのだけど、「お! こういうところから進めるのか」というような感じで、けっこうな続きが気になる吸引力がある。

 

 ギャグはけっこう自由な発想で作られているのだが、逆に作中に出てくる真剣なモチーフは、本チャンで使う前に一回丁寧に顔出しがされていたり、ただ流用されたり、展開して流用されたりとなかなか緊密な構成である。

 この構成の緊密さと先述の吸引力がハリ部分、ピュアでスローなストーリーと面白いキャラクターやその掛け合いがメリ部分となっていて、なかなかほかでは見かけない、独特のバランス感覚になっているのではないでしょうか。ほのぼの作品として読みはじめると「意外と引き込まれるな…」となり、逆にシリアスなドラマだと思ってのめりこむところから入ると、くすぐりにやられちゃうというか。

 

 しっかり手の入った佳品、……というだけではなく、アートとしてここを勝負したい! ここが飛躍のポイントです!みたいなシーケンスもしっかりあるのも熱い。



『子供はわかってあげない(上)』(田島 列島)|講談社コミックプラス

 あと好きなポイントが各話のタイトル。最初はバラバラすぎて、連作短編なのかと思った。

 けど実際には、これらのタイトルはけっこう話の内容と対応していて、何ならちょっと暗号にした構成メモ、みたいな感じでもあるんですよね。こういう章タイトルを持っている作品好き。

 

 結局タイトルの意味だけはよく分からなかったのだが、それ以外はすべてが最高。本当に面白かった…! タイトルの意味は、……考察まとめでも読んで自己解決します。