魔が差す、という言葉があるでしょう
あれ、極稀に、本当に魔が差していることがあるんですよ
人を惑わすと言うだけ鑑みれば実に悪魔らしい。
人に試練を課す事だけ鑑みれば実に神様らしい。
神が人に何かを願うなんて
あべこべだと思わないか
「昔好きだったやる夫スレを読みかえす」と書かれたメモ(酔っぱらって完全に「明日今の時間をおぼえていないな」となったときに書く用のメモ)を見つけたので、従ってみることにした。
選んだ作品は「やる夫がデビルサマナーになるようです」。めちゃくちゃ名の知れた名作で、当時インターネットのこのあたりにいた人は全員読んでいたのではないだろうか。
途中くらいまでは「まあ面白いけど、特別なにかがあるという感じではないかな。子供のころの俺は夢中になって読んでたけど、子供だったからかな笑*1」みたいなことを思いながら読んでいたのだけど、パンデモニウムが具現化するあたりから「いや~……、面白い……」になった。
ある日突然悪魔に身柄を狙われるようになってしまった主人公が、「悪魔召喚プログラム」の力を借りて戦い、成長していく、……という筋書きなのだけど、その裏には「ひとりの人間を救おうとした、お騒がせだけどどこか憎めない神様」のお話がある。
時が全てを解決してくれる
…………そう期待しよう
構想が優れているタイプの物語で、序盤のわりと脈絡なく進んでいくところから中盤、物語の構図が明らかになってくるあたりのわくわくがすごい。ストーリーの進みに合わせて明らかになっていく事実が、それ以前に語られていた物事と、時には無理なく、時には驚くべき形でつながっているので、マウスをスクロールしたりつぎの話へのリンクをクリックするのが単純にやめられない。
それに思考力も高く、それぞれのキャラクターがロウvsカオスで思想をぶつかり合わせる中盤のシーンにとても説得力がある。
スレでも「○○の考えかたは絶対に間違っている」というコメントがあったり、それに対して「そうかな。俺はわかるけど」みたいなレスバが発生していたのとか、作中登場人物の考え方がたんなる物語の飾り以上になっていることの結果だったんじゃないでしょうか。
個人的にいちばん好きだったのは「悪魔と人間の契約」という、物語の基本設定を逆手にとった、印象的な「約束」のシーン。悪魔と人間の関係はけっこう情たっぷりに描かれていてどれも良かったですね……。
名作は読み返しても名作だった。フットワークの軽い神様の話を10年ぶりに読めて*2、とても良かったです。