How about you?~「セカンド・カミング」~

 

 「夜は往年のバンド曲を紹介する人…」で途切れており、クリックしたらふつうあらすじの全文が出る。……はずなのだが、僕の環境が悪いのか何なのか、押してもなにも起こらなかった。

 「まあどうせ、『夜は往年のバンド曲を紹介する人気DJで、ある夜パーティーで知り合った女の子と話すうちに、過去との確執がほどけ、音楽への情熱そして生きる意志を取り戻す…』くらいの話だろう笑」と思って流したのだが、なんかやっぱ気になってしまって、本編を見てしまった。*1

 

 そしたらもうめちゃくちゃしんどい話で、見終わったあとすごく落ち込んだ。(以下内容に触れるので注意)

 

 ひとりの男が追い詰められていくお話。

 魅力的なところがあるのだけど、頑なで、打ちのめされているときもプライドが高い。周囲の人は彼を心配し、ときには手を差し伸べてくれるのだが、彼はそれに素直に答えることができない。

 「状況を悪くしてしまう」と知りながら、自分の責任でその選択肢を選んでしまう。献身的な情熱の、……少なくともその残り火くらいはあるのだが、それを、自分をケアし生活を成り立たせてくれる共同体のためではなく、彼一人しか関係のない抽象的な物事のために向けてしまう。その背後で、生活がないがしろにされている。

 自分の過去の行いを後悔しているが、反省して生きかたをおおきく変えることはなく、受けている報いを粛々と受け入れるだけで済ませている。

 

 そういった感じの人間のすがたが、肯定も憐憫もなくニュアンスのないトーンで描かれている。上で述べたような特徴を持っている人にはとても自分事として刺さるお話になっているのではないでしょうか。

 

 逆に、「そういう人間を描く」以外のところに気持ちよさはまったくないので、テーマをつかめないとちょっとよくわからない映画で終わるかもしれない。

 

 シーンはどれも説得力深く、情感たっぷりに描かれている。とくに、弾き語りのところはすごくて、ふつう映画のタイトル要素(原題の「カリフォルニア・ソロ」という曲を登場人物が演奏するシーンがある)が作中で出てくるところって、すごいクライマックスの、カタルシスあるシーンになるじゃないですか?

 この映画では、非常に渋い使われかたをしていて、観ていていたたまれない。曲自体もまったく感情を揺さぶられるようなものではなく、展開も胡乱で、だれもが「早く曲終われ~」と思ったと思う。でも、意味ありげに長くとられるんですよね。ものすごい皮肉。製作陣は作ってて楽しかっただろうけど、見せられるほうにとっては耐えられるようなものではないです。

 

 いろいろ言っちゃったけど、ひとを嫌な気分にするのが目的の悪趣味な映画、というわけではないし、べつに芯まで暗い映画というわけでもない。むしろ「0に戻った」という開放感を感じるような結論になっていると思う。

 映画の最後に「あなたはどうなの」という問いかけがあるが、それが主人公を通り越して、自分に聞かれているように聞こえるんですよね。

 

 映画のなかの物語で、彼はひとまず清算したけど、エンドロールが終わったあとの僕の人生には彼が抱えていたのと似たような問題*2が、目をそらしながらこれまでやってこれたからなんとかなるだろと勝手に思っているさまざまな自分の問題が、……あるなあ、と否応なく感じさせられてしまうのである。

 

*1:あらすじはぶつ切り省略するほうが宣伝効果あるのかもしれない。

*2:とはいえ、彼と比べるほど大きくはないのだが。