「パレードへようこそ」という映画を観た。以前に紹介したアナーキー・イン・ザ・UKというele-kingの連載記事の回のひとつで、この映画とそのもとになった歴史上の出来事が取り上げられていて、ぜひ見たいなあと思っていた映画だった。
Amazonでレンタル課金すればふつうに見ることができた。世は大サブスクリプション時代、……サブスクでたまたま表示される映画以外はちょっとねえという気分もあったが、ここは思い切って課金して見てみることにした。
サッチャー政権下でいろいろ大変な目にあっていた炭鉱労働者を助けるために、レズビアンとゲイのコミュニティが募金活動を行うのだけど、このふたつのカルチャーグルーにはもちろんアンマッチがある。けれど、最終的には連帯する。
この、グループによっていろいろな思想やライフスタイルがあり、それに順応出来たりしなかったり、そのためにいじめたりいじめられたりする人類の、それでもあるときにはできたりする「連帯」のことをメインに語るお話である。
「連帯」なんて、2021年の日本ではあんまり重要とはされてない価値観なので、逆にそれの良さをガツンと叩いてくる映画、……観ていてすごい良かったです。
基本的にはエンターテイメント作品としての作りになっていて、見ていて流れに任せているだけで楽しめる。悪いドラゴンを伝説の剣を手にした勇者が倒すオーソドックスな物語があるとして、悪いドラゴンをヘイト、伝説の剣を「連帯」、勇者を当事者であるLGSMと炭鉱で働く人たちにしたお話になっている。
逆にいえばエンタメ作品ならではの難点ももちろんあって、……もととなった事実にはあったであろうシリアスな部分は、綺麗な映像やミュージカル風の味付けといった映画の技法に隠されているし、公正を最大限目指すならあるべきだったマイノリティへの配慮というものもない。*1脚本は基本的にはハッピーなものになっていて、……現実の運動はすくなくともこの脚本より快適だったということはないだろう。
だからこそ、いいと思うんです。そういう、ひゅーと言って応援したくなるような、登場人物のそれぞれに肩入れしたくなっちゃうような、ひとシーンひとシーンの喜怒哀楽に自分も感情移入しちゃうような作りの、大衆向けのエンタメ映画がこの題材で作られているのはとてもいいことだと思いました。
し、本当に言えばこういうことをわざわざ取り上げて美点ですと紹介したくない。たんに面白いし笑えるし泣ける。めちゃくちゃいい作品なんです。見たら推しキャラが見つかると思います。
個人的には上の画像で左から三番目にいる「率直に言うと」という表現が印象的な鉱山労働者たちの渉外役が好き。
もう一度リンクを置きます。*2じつはこれを課金して見たあと、彼女とペアで加入しているふだんはあまり使っていないほうのサブスクでは無料で見れたことに気づいて……、落ち込みかけたけど「連帯」の気持ちを思い出してなんとかこらえた。みんなで、できるかぎり、おたがいをヘイトせずにやっていこう。