「ストーリィ・テラー/あるいは、最高に甘い幸せの物語のためのプロローグ」を読み返すと…

 

 主人公の蒼星石は図書館の職員。発達に障害を抱えているものの、彼女にしかない特別な能力を買われて、週3回の朗読会を任されている。なにやらその朗読会にまつわる事件が起こったようで、警察が彼女を取り調べている……。

 というところから始まるお話である。

 

 自分で作った話なので、まあ数えきれないほど読み返してきたのですが、いまだに、というか時間がたてばたつほどなのですが、読んでて「うぅ…」となってしまう。

 フィクションを作る際には、自分の中で「これはこうだろ!」みたいな衝動があって、それをマイルドにしてアレンジメントしていくみたいな、そういう作業があるんだと思うんですけど、……そういう作業があるってことをまだ知らなかったころに制作したお話なので、読み返すとなんだかあてられちゃうんです。

 

 話の構成はばらばらだし、オチまでの筋道は「うまく言いきれなかったけど、たのむ伝われ!」って手放しで叫んでいるみたい。(たぶん)学んだばっかりのいろいろな知識を恥じもせずすぐ話のなかで使ってみちゃってるし、その結果やっぱり理解と人生経験が浅いのでいろいろな粗がある。タイトルも力が入り過ぎである。これは黒歴史か?

 

 でも、まぶしいではある。し、いろいろ言ったけどでもいまになって見てみても、めちゃくちゃひどいというわけではない。むしろ、押しているいくつかのポイントは成功しているような気もするし、そのおかげで、作品として成り立っているといってもぜんぜんいい水準になっている。

 

 あとこの話、けっこう評判が良くて、当時これで僕の名前を憶えてくれた人もけっこういるようなのですよね。それに個人的にも、このお話を読みかえすことで、そのころ自分が考えていたこと、そのころ自分がどういう内面がある人間だったかを手がかりを持って思い出すことができる。

 

 「ギリ直視できる」程度の黒歴史ではあるが、なんやかんや僕の人生にあって良かったなと思える自作ストーリーでした。自分の昔のものを読みかえすときはどうしても、うまくできたもの、うまく包装していい感じの外見にできたものを優先しちゃうのだけど、本当に大事なのはこういうやつだったりするんだよな……。

 

641 名前:名無しのやる夫だお[sage] 投稿日:2013/11/13(水) 10:18:07 id:tvgZNXNM0

乙でした。
原作つきじゃないのか、オリジナルでここまで書ける人って凄いわぁ……。

 とくにこのときの>>641さんのレスはとてもうれしかった。これにどれだけ勇気をもらったことか。思うだけじゃなくて書き込んでくれてありがとうございます。

 

 こちらはほかの自作振り返りです。