最近はまたあまり本を読まない個人的な時期に入っているが、かといって文字を読む総量が変わっているわけではない。本のかわりに、インターネットでたくさん文字を見ているから。
この「ハーツ・オブ・アイアンII」のプレイレポート記事を夢中になってずっと読んでいた。広く「HOI」と略される、スウェーデンの会社が製作した戦略級のシミュレーションゲームシリーズの一作で、舞台は第二次世界大戦前後の全世界。国土を工業化して生産力を高めたり、外交をして地政学的優位を目指したり、研究開発や政治体制変更で開戦準備を整えたり、戦争をしたり巻きこまれたりするゲーム。
こういうゲームには珍しく、ドイツやイギリスといった国際情勢の主役になる国だけではなく、ハンガリーやフィンランドと言ったマイナー国、一見戦争にはまったく関係なさそうに見えるブラジルや南アフリカといった遠くの国、はては歴史上の一瞬だけユーラシア内陸部に出現するちいさな独立国まで、あらゆる国を率いてプレーすることができる。
僕自身はまったく触ったことのないゲームだが、うわさはかねがね聞いていて、今回ちょっと目につく範囲にこの連載のリンクがあったのでちょっと読んでみたのだけど、とても面白かった。
さて,ポーランドである。出し抜けに恐縮だが,常識的に言って勝ち目はない。1947年の段階で国家が地上に残っている可能性はほぼ皆無というのが,プレイ前の感触だ。だが,何しろハーツ オブ アイアンIIはParadox Entertainmentのゲーム。何かとんでもない奇跡があるかもしれない。
(第1回:ポーランドは滅びず、我らある限り)
現実の歴史が題材となっているゲームのため、プレイアブル国家の力の差は激しい。アメリカのようになにをやってもまず負けることのない国から、自分の運命を自分で決めることがまったく望めない国までがある。
連載の第一回はポーランド。第二次世界大戦を生き残るにはどうすればいいのか、いろいろな案が浮かんでは苦い現実のまえにつぎつぎと却下されていく。
……結論からいうと,これも無理だ。まず要塞線を作るにはポーランド・ドイツ国境はあまりに長く,ポーランドの工業力ではとても実用レベルの要塞線が引けない。かといって戦略的に重要なポイントだけ要塞化したのでは,フランスの悪夢を1年ほど前倒しで見るだけである。
(第1回:ポーランドは滅びず、我らある限り)
最終的に記事では、首都ワルシャワ付近をガチガチに固めて守ることで、史実よりずいぶん長くポーランドを延命させることに成功していた*1。
仮想戦記もののプリミティブな興奮と、ゲームデザインのシビアさ・切なさ、そしてそのシビアさに対案を持って立ち向かってなんとか限定的でもいいから勝利をあげようとする感じ、みたいなのが読みどころで、16回の連載をどきどきと非常に楽しんで読んだ。
しかしながら,英仏から支援が受けられなかったうえ,スペイン共産党を通じたソビエトの意向と,アナーキスト諸派との間で路線対立を抱え込んだままの人民戦線政府は,独伊が後押しする反乱側に対して,次第に劣勢に追い込まれ,1938年に降伏します。
(…)
ここでクエスチョンです。独裁体制ということでドイツやイタリアといっしょくたに考えられがちですが,フランコ独裁におけるファランヘ党は,ナチ党やファシスト党と異なり,政権そのものと一体になっていたわけではありません。ヨーロッパにおける枢軸陣営主流と,利害も違えばイデオロギーも微妙に異なるスペインが,史実に相違して少ないダメージで内戦を終えられたなら,そこにはどんな可能性が広がっているのでしょうか。(第9回:我々の外交の勝利だ(スペイン国粋派))
毎回の連載の枕に設けられた、ちょっとした歴史のおさらいと、それを踏まえて今回のプレイの軸を設定するセクションの文章は非常に流れが綺麗。知識を背景にした小ネタが面白く散らばっていて、ゲームを知らなくても読み物として良かった。