# 私の最愛海外文学10選 でマウンティングを狙った

 

 「#私の最愛海外文学10選」というのが流れてきていたので、僕もちょっと考えて投稿してみた。言うまでもなく、こういう何選をリストアップする形の#はさりげなく自分の趣味ランクをアピールし、周りの人にたいして優位をとり次につなげていく大事な機会である。

 というわけで今回は、この10選で僕が個人的にどのようにマウントをとろうと狙ったかを解説していきます。

 

 

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(著:ジョナサン・サフラン・フォア)

 マウントマウントと言っておいてなんではあるが、最初のこちらはマウントをとるというよりはどちらかというととられる側の作品である。発表年は新しいし、ビジュアル・ライティングという前衛的な手法が使われていてややチャラさがある。決して文学作品として定評を得ているわけではないし、むしろ、ある程度大衆向けの作品として映画化されているので、「文学」に数えない人もいるかも。

 

 ……ただやっぱり、個人的に大好きなのでいれざるを得ないというのもあるのですが、マウントってね、あまりブイブイやりすぎるとそのうち自分より強くて正義の心を持った人にさらに上からぶちのめされたりするので、節度をもってやるのが正解だったりするんですよね。

 いったん最初にちょっと浅めの作品を置いておくことで、謙遜から入る。それでひとまず自分の安全を確保しつつ、同時に後続のマウンティングを通していく、という、そういうもくろみである。

 

二都物語(著:チャールズ・ディケンズ
ドクトル・ジバゴ(著:ボリス・パステルナーク)

 こちらはどちらも知名度がある作品で、とはいえカノンのど真ん中というわけでもないので、「あの辺を一通り読んでいるうえであえてこのあたりをチョイスしている」という感じが出る。僕のツイートを見た人はこのあたりで早くも「こいつ上だな…」と思ったのではないだろうか。

逆光(著:トマス・ピンチョン

 トマス・ピンチョン作品はサブカルじゃんけんではかなり強い札なので、せっかく読んだのであれば言及し倒さないと損である。

 

感情教育(著:ギュスターヴ・フローベール

 あったまってきたところで、歴史の教科書にも残っているような教養古典の小説家を一発行っとくというのは、マウンティングの王道といえますね。しかも、あえて『感情教育』をあげることで、より有名な『ボヴァリー夫人』は当然読んでいますが…という雰囲気を醸し出すことに成功しているのもポイントである。

 

ボヘミアの森と川 そして魚たちとぼく(著:オタ・パヴェル)
かばん(著:セルゲイ・ドヴラートフ)

 そのうえでこちらのふたつのような、おそらくほとんどの人が名前を知らないだろうが、検索してみると専門家筋では評価が高い、となるような書の名前を出した。これはどちらも小説の大作というよりは、ちょっとエッセイ的な調子もある軽めの作品で、そういうジャンルもしっかり評価しているのだな…という印象を与えることができる。

 また、……まあ書くとなれば文字数的にX課金が必要になるので書かなかったというのが正しいのですが、今回ツイートでは著者名は省略しているので、この普通名詞すぎる「かばん」というのが署名だけ単体で検索しても見つからない*1、10選の中でもさらなる謎の作品として印象を残す、というのも狙いのポイントですね。

 

 いくらでも検索で解決できるこの時代、マウントをとることは飛躍的に簡単になったが、そこで「検索ではたどり着けない懐の広がり」を見せていくのが現代のワンランク上のマウンティング術と言えるだろう。

 

半分のぼった黄色い太陽(著:チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ)

 ここまで西洋の作品が続いたので1個それ以外の地域の文学作品をあげることで、……バランスが達成されたとはまったく言えないが、すくなくとも「すべての地域に目を配っている」という評価を得、周囲にたいして優位をとることは可能となっている。

 

レモンケーキの独特なさびしさ(著:エイミー・ベンダー
ハドリアヌス帝の回想(著:マルグリット・ユルスナール

 ここまでで十分優位ポイントは取れているので、残りふたつは自由に、頭に浮かんだ好きだな~と思う作品から選んでみた。……とはいえ、タイトルが印象的なものを選ぶようには心がけた。

 この終盤になるとツイートを読む人もつかれていて、いちいち書名を検索とかはしていないと思うので、内容や文学史的評価というよりは、ぱっと見のタイトルの「なんかスゴそう…」感を重視したほうがより”とれる”という判断である。

 

結論

 本を読むと感受性が豊かになり、想像の世界が広がる。

*1:「かばん」という書名の小説、ほかにもいくつかありそうである。