ミッション・コンプリート~20’J1第26節 川崎フロンターレvs北海道コンサドーレ札幌~

 

 2016年のアウェイ千葉戦、2017年のホーム浦和戦、2019年のルヴァンカップ勝戦と並んで、忘れられない試合になると思われるのが、2020年シーズンのアウェイ川崎戦だった。

 

 長い導火線を引きずった試合だった。昨年のルヴァンカップ準優勝メンバーのほとんどをチームに残留させて臨んだ2020年シーズンだったが、第1節を消化したあと、コロナウイルスによりリーグは長い中断に入ってしまう。その時期に、主力選手を2名放出することとなり、「今年は降格ないんだからいいんじゃね?」と札幌は勝ち負けをある程度度外視しつつ新しい戦術を試す時間を過ごしていた。

 

 「決勝戦に置いてきた忘れ物を取りに行く」……、という威勢のいい言葉ではじまった一年だったが、結局は長いプレシーズンになってしまった。新たに導入された、機動力のある選手を中心に据えたマンマークとプレッシングの新戦術は、「福森が前線のモンスターズ(都倉やジェイ)に蹴っていれば勝てる! わはは」みたいないままでの札幌の戦術(?)に慣れていた僕にとってはややちょっと寂しいものだった(とくに深井選手や宮澤選手、進藤選手や福森選手といったこれまでの札幌の顔だった選手の序列が下がってしまうのが寂しかった。)。

 

 実際、この戦術は(マンマークという性質上ある程度しかたないが)、前半こそいい試合をするものの、後半は足が止まって相手のボールの出し手を抑えられず、スペースを使われまくって崩壊する、みたいな惨めな負けかたをする時期が長くてしんどかった。すこしずつ緩急の使いかたをおぼえ、選手の個人能力で上回っている相手にはすこしずつ勝てるようになってきて、……その直後にあったのがこの川崎戦である。

 

 川崎フロンターレ……、彼らがルヴァンカップ優勝トロフィーをつかむのを去年目の前で見ないといけなかった相手であり、ここ数年は、毎年1回は6点とか7点とか大量失点して負けている相手であり、そもそもJ1リーグでの対戦では歴史上いちども勝てていない*1相手であり、今シーズンは25試合22勝2分1敗とぶっちぎりで首位を走るチームである。

 

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 はじめに述べたとおり、忘れられない試合になった。攻めては、両WBに逆足の選手を起用して被カウンターをケアし、守っては、川崎相手にマンマークのプレスを敢行、トランジションの局面では涙ぐむくらい素早い切り替えを見せてくれた。

 そういう戦いができたのも50分くらいまでだったのだけど、そこからは、守りに入るのではなく、ドゥグラス・オリベイラアンデルソン・ロペスをトップに投入してツッパリきった。それをほめてくれるみたいに、サッカーの神様が2点の美しいゴールをくれて、それを守り切った。

 

 これまでの札幌の積み重ねが、すべてこの試合のためにあるような素晴らしいゲームだった。

 

 試合終了間際に実況の桑原さんが言った「ミッション・コンプリート」という言葉が、ほんとうにこのためにあるような表現で、美しかった。

 

*1:鹿島にはシーズンダブルを決めたので、(ちゃんと調べてないから、ひょっとしたらヴェルディとかフリューゲルスとかが残っているのかもしれないが)ひょっとしたらJ1で対戦したことがあるなかで勝ったことがない最後のチームかもしれない