幽霊を追い払え(The Twang - Push The Ghosts)

 

 個人的な考えですが、それぞれの人間にはそれぞれの、感受性の得意ジャンルというものがあって、あまり得意ではないジャンルを甘受するときには、得意なジャンルの感受性を援用することがあるのではないかと思っている。

 

 僕が一番得意なのは文章を読むことであり、概念を操作すること。苦手なのは視覚的なイメージを見たり、歌ったり踊ったりすること。音楽を聴くことはそれほど苦手ではないと思うけれど、文章を読むことほど得意ではない。なので、音楽を聴くときにはどうしてもそれにまつわるテキストを読んでしまうし、逆に、まつわるテキストに主導されて音楽への興味や好意が湧くこともある。

 

 The Twangというバンドを最近熱心に聞いているが、好きになったきっかけはたったひとつ。「Push The Ghosts」というタイトルであり、曲を聴く前からこの曲を好きになるだろうという確信があった。もしあまりいい曲ではなかったら悲しいな、とも思った。タイトルの持っている風格は完璧なのに。

 

 ただ、ループミュージックっぽいベースの入りからすでに良く、心配は無駄に終わった。そのあと、詞のリフレインの効いたメロ部分。良い意味で上品ではない声で歌われる、絶妙なテンションのエモいサビは本当に完ぺき。

 

Jobs to do, that involves me and you
If we get our act together we can push away the ghosts forever
Ah, push away the ghosts forever
Ah, push away the ghosts forever

 

俺とお前でやらなきゃいけない仕事

俺らでちゃんとやれば、幽霊を永遠に追い払うことができる

ああ、幽霊を永遠に追い払える

ああ、幽霊を永遠に追い払える

 タイトルを聞いた時点では「Push The Ghosts」という意味深な三単語が意味していることはよくわからないが、サビで副詞を二つ補ってもらい、それまでの歌詞で文脈が補完されると言っていることがわかるようになる。この仕掛けがとてもよくて、タイトルをそのまま「push away the ghosts forever」にせず謎をとどめたのは非常に大きな仕事だったのではないか。

 

 The Twangは2004年に結成された、イギリス、バーミンガム出身のバンドで、現在のメンバーは6人。Twangというのは、日本語で言うと「ポロン」というような、弦をはじく音の擬音語。これまでに4枚のスタジオアルバムを作っていて、今年の11月にはニューアルバム、「If Confronted Just Go Mad」をリリースする予定。

 

 最新の曲がこちら、雰囲気はだいぶ変わっているが、べつに雰囲気から入ったわけじゃないので、相変わらず好きでいられる。