Liquidoが意外な音をしていて良かった

 

 なにげなくSpotifyを鳴らしながら仕事をしていたら耳にとまる曲があった。Liquidoというおそらくロックバンドの、Ordinary Lifeという曲である。

 

 バックグラウンドから意識の前面にきゅっと入ってこれるくらいキャッチーなイントロは、耳にあたりのいいやわらかな電子音ののりのりリズムでできている。つづけて聞いていると、音楽から想像していたのとはちょっと違う、やや青臭い目のボーカルが入ってくる。

 曲はタイトルの「Ordinary Life」を連呼するところに向かって盛り上がっていって、そのあとは、おもわず性的なたとえを使ってしまいそうなくらいすぐ余韻モードに入る。

 

 この複合的な感じが、僕の琴線に毎回触れているようないい意味のだささだったので、その日からは音楽を聞くときにはLiquidoの曲をよく聞いているのでした。

 

 名前をみるとラテン系の言語で「リキッド」にあたる語のように見えるのだが、ドイツのジンスハイムという町出身のバンドらしい。このNarcoticという曲で中欧を中心に有名になったが、それ以降そこまで大きなヒットを出せず、一発屋の印象をぬぐうのに苦労したバンドのようである。

 

 その大ヒット曲を聞いてみたけれど、ドイツのバンドという先入観を持って(そしてさっきのOrdinary Lifeを聞いた印象を引きずって)聞いてみたらちょっと意外な音をしていた。なよなよしたナードなエモじゃないか、これ。聞いていると僕の愛してやまないMae*1と似た感情になる。 

 

 最初は電子音系の音楽に軸足を置いているバンドが、ちょっとださめのオルタナポップを組みこんでみた、んじゃなくて、ひょっとしたら重要性的には逆なのかもしれない。

 

 ほらやっぱりな! なんだこのエモーショナルで自意識が高くてくさい*2イントロは! 好きです!

 

 バンドは5枚のオリジナルアルバムを発表して2009年にキャリアを終える。聞いてみると、わかりやすいポップさとやわらかなリズム電子音のアクセントという特徴を維持しつつ、着実に曲作りの引き出しを増やしていっているような感じがした。

 ただ、一発当てた曲が一発当てたゆえんは音楽的な良さというよりはもっとエモーショナルななにかだったと思うので、その着実な進歩にそこまで人気はついてこなかった……、というストーリーだったのだろうか。

 

 キャリア後期の曲もぜんぜん聞いててわくわくできるいい曲だと思うんだけど……。ミュージシャンって難しい商売ですね。

 

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 ていうかこのジャケットでやや青いポップバンドだと認識するの難しくない?

*1:詳しくはEmbers and Envelopes - タイドプールにとり残されて

*2:ぜんぶいい意味で言ってます。