最近、「Sea Power」というバンドが好きでよく聞いている。たとえばこんな曲だ。
固体か液体か気体かでいうなら気体のように、ふわっと空間を満たすように薄く音が鳴っている、……絵画でいうなら印象派なインディーロックという印象。音の数が多い曲は僕は本来好きで、さらに言うなら多い音がハーモニックにまとまっているほうがメインの好きなのだけど、こういう薄い塗りを重ねていって世界観を作る曲も大好きです。
あと、ボーカルの音に合わせて透明感のあるギターをユニゾンさせる手法も、昔々HUBで流れていたストロークスの「23:17」*1を聞いて以来代々好きなのでそれもうれしい。この曲だけじゃなくいろいろな曲でそれをやってくれる。
イングランドのブライトン出身のバンドで、結成は2000年。それから現在に至るまで活動を続けている。スタジオアルバムは7枚。2022年に「Everything Was Forever」という新作アルバムリリースを控えていて、それを盛り上げるための新曲がいくつか公開されている。
そのうちのひとつがこれ。画面を9分割*2するという、先入見だと「画期的とやり過ぎでは?の中間くらい」になるようなミュージックビデオ演出がされていて、実際観てみるとでもけっこう面白くて引き込まれる。
一個一個の映像はべつにとても面白いようなものではないのだけれど、それがスイッチしていったり、映像がかぶったり、終盤には9個のうちのひとつにさらに9分割された映像が映ったりして見飽きない。
こういう、画面を何分割かして違う映像を流して感動させるという手法は、映画とかドラマではやりようがなく、ミュージックビデオ限定の映像演出だと思うのだけど、これの意味とか効果とか発展史とかを切り出してまとめている論考などあったらみてみたい。知っている人いたら教えてくれるとうれしいです。
一見するとクラシックな斜め見下ろし視点のCPRGなのだが、実のところは「論理的思考」や「共感力」といった24種類のスキルが、全て頭の中の声となって“あれしろこれしろ”と隙さえあらばしゃべりかけてくるカオス極まりない会話システムと、臆することなく攻めてくるブラックユーモアを武器にした、異色の作品である。
このバンドは「Disco Elysium」というちょっと変わったゲームの音楽も担当するなど多彩だ。たしかに、ゲーム音楽向きの作風ではある気がする。
そのひと月前、バンド、British Sea Power(ブリティッシュ・シー・パワー)は、バンド名をより合理的なSea Power (シー・パワー)に縮めることを発表した。彼らは慎重に言葉を選びながら、“ブリティッシュ”を切ることは、イギリスそのものへの嫌悪を意味することではないと強調し、イギリスに限らず世界的な流れとしての、“ある種のナショナリズムの台頭による孤立主義や、敵対的なナショナリズムと混同されるリスクを回避したい”ということを理由にあげた。
あとは、ちょっとまえに名前から「ブリティッシュ」を省いたというストーリーも面白かった。いいことだと思う。
音楽もいいし、改名の経緯も面白いバンドなので、ぜひ聞いてみてね。