スティックカリフラワー ほか

 

タイトルで得した?~『今夜ヴァンパイアになる前に―分析的実存哲学入門』~

今夜ヴァンパイアになる前に « 名古屋大学出版会

 という本を読んでいた。「人間が意思決定をするとき、合理的に正しいといえるしかたで決断できない場合がある。それは『ヴァンパイアになるかどうか?』というときのような、その決断によって自分自身の状態や思考の傾向が完全に変化してしまうような決断である。変化した後の自分がなにを感じ考えるか事前にはわからないのに、なぜ今の自分が決断できるだろうか。その場合には、自分自身が変化するような新しい経験を、それが好ましいか辛いかに関係なく、その『新しさ・変化』ゆえに選ぶ(or選ばない)といった視点が必要になってくる」といった感じの主張をする哲学の本でした。

 

 この本タイトル付けがけっこうエモくて、扱われているテーマも文学的なのでけっこう名前を聞いた気もするのですが、……読んで思った通り満足した人はいるのか?とちょっと思った。

 テクニカルに面白い部分は、「規範的意思決定理論」というある程度合意されている(のであろう)理論があって、そこにたいして「変容的な経験」を伴う意思決定がコーナーケースになりますよと言うことと、その乗り越え方として「啓示の価値」を提案しているというもので、その議論に「子供を持つ」などの人生の重大な選択について考えるときのエモさを重ね合わせているけれど、そうか?とは個人的に思っちゃった。後者のほうもコーナーケースになるほどの変容的な経験だろう、とはあんまり納得いかなかったんですよね。そしてそこが納得いかないと、この本は自分の人生に引き付けて考えるエモ本とはならず、まあ議論の展開を楽しむくらいの本になる。

 僕が引っ掛かったポイントは一例ですが、ほかにも「うーん」となるところはさまざまなレベルでいろいろあるのではないかと思っていて、タイトルが示唆するような実存的な問いとこの本で展開されている議論を結び付けて理解できた人ってそんなにいないんじゃないか、……と思いました。

 

 でもふつうに原題そのまま『変容的経験』と訳していたら、ちょっとの人しか読まなかっただろうし、その意味ではタイトルで得した本、と言えるのかも。

 

スティックカリフラワー

 最近はまっている野菜がスティックカリフラワーである。

 

日本生まれのスティックカリフラワー。軟らかで、ほんのり甘く、可能性を感じる形はシェフに人気。 春まきもできるようになった。

https://www.tokitaseed.co.jp/bai.php?varietycode=130040

 花みたいな見た目の野菜で、名前の通り、カリフラワーを品種改良して縦に伸ばしたみたいな感じでしょうか。生で食べることができて、花の部分はふつうのカリフラワーとはまた違ったぼそぼそっとした食感を、茎の部分は案外やわらかくでもしっかりした「野菜」って感じの味を楽しむことができる。天ぷらにしてもおいしかった。めっちゃ好き。どんな野菜よりうまい。毎日食べた。

 

 マイナー野菜で、生産者もあまりいないのか一時期「農直」コーナーにならんだあとはめっきり見なくなってしまった。ここを見ている静岡東部の農家いませんか。スティックカリフラワーを、ご供給ください。

 

いなり、こんこん、恋いろは

「いなり、こんこん、恋いろは。 (1)」よしだもろへ [角川コミックス・エース] - KADOKAWA

 「いなり、こんこん、恋いろは。」を読みました。昔途中まで読んだことがあって、その時ちょうどこの作品のアニメが放映されていたので、アニメなら一通り見ているという同期と一緒の席に座ったときに、知ってる話題で仲良くなろうとして「そういえばこの作品(原作だけど)最近読んだよ~〇〇が××で△△でうんたらかんたら、面白いよね~」と話しかけたら「主人公がアホすぎる」と一言だけ言われてそのままその会話は終わった。……という思い出がある。*1

 

 久しぶりに手に取って最後まで読んだ感想としては、そんなにポジティブなものではないのだけど、でも絵はきれいだし、「他人に変身する能力」を手に入れた結果トラブルを解決しようとやたらと変身し、さらなるトラブルを巻き起こしてしまう…、というシチュエーションコメディ的な序盤の展開は楽しく感じるものがある。

 

 あと、昔読んだ時は中学生女子の仲良しグループ間の恋心とかぎすぎすが描かれてて、何だこれ? なんか知らないけど知らない世界で面白…。と思ったのとか思い出しますね。pixivに入り浸ってssを読みまくるようになる以前の思い出である。

 

*1:オタクは全体的にアホが嫌いな傾向があるのである。