ラーメンからグルメ漫画へ?~河合単 ・久部緑郎「らーめん才遊記」~

 

 正直「ラーメン発見伝」という作品が面白すぎて、すぐ続編に行くのではなく、ゆったり、YouTubeでファンが語ってる動画などを見ながら余韻に浸りたいな2週間くらい…、と思っていたのですがやはり続編の「才遊記」「再遊記」までひとくるめにして語っているレビューが多く、読まざるを得ないか、という気持ちに。

 

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 オリジンが偉大過ぎたため、だいたいのところそのエンドコンテンツくらいだろうとナメはしていた。しかーし、これもまたすごい傑作でしたね。しかもちゃんと味変も成し遂げているし。

 

 主人公は料理の英才教育を受けたものの、親にラーメンを禁止されてきた汐見さん。そんな彼女が「ラーメンハゲ」の経営するラーメンコンサルタント会社に就職し、また、さまざまなラーメンをめぐる冒険に繰り出していく。

 「発見伝」がラーメンにまつわるいろいろを紹介する、といったところが作品の軸にあったのに対し、こちらはもうすこし「グルメ漫画」「料理漫画」っぽくなっている。ラーメンを軸にしたお話づくりと、ラーメンそのものの魅力を伝える部分の配分が見直された感じ。

 

 どちらかというと個人的には「発見伝」の、ラーメンが好きすぎてときにはストーリーがお飾り程度のものになり、グルメ漫画というよりは紙と絵でできた「ラーメン」そのものとなっていた、……でもそうすることによって最終的にフィクションとして一つの到達点に至った、クルードな良さを高く評価していた。

 なので、「才遊記」に関しては、面白いし、好きだし読むんだけど、心のどこかで一般的なグルメ漫画にまとまったな…、と思うところもなくはなかった*1

 

 ただですねこの作家、フィクションづくりの勘所をよくわかっているというか、最後に読みどころを作り同時にすべての帳尻を合わせて「ワクワク」させる能力! これがとてもあり、やっぱり「才遊記」も読み終わって振り返ってみれば一個の作品として傑作と言える水準に乗せているんですよね。

 仕事で納期やら原価やらと格闘しながら生み出しているフィクション。そうである以上、どこかにゆるみがあるのは仕方のないことですが、それに萎えない情熱を持ち合わせていて、その情熱が向く一番の「ポイント」を最後に持ってきてそれにしっかり向き合ってこの時なりの答えを出す。結局その芯があれば、すべてのフィクションはつまらなくなるはずがないんだということを改めて思い知らされました。

 

 ほかにも、

 

 こういった、

 

 くすっとできるシーンも随所にさしはさまれて、あまりにもただの「ラーメン」だった前作より、ひょっとしたら入門者には勧めやすいかもしれない。

 

 でもな~、「発見伝」→「才遊記」と読むからこそ、主人公のテイストの違いをよく感じられていいと思うんですよね。うじうじした努力家と、竹を割ったような天才*2という絶妙のテイストチェンジが…。

 

 とはいえ、順番にこだわらず、誰もが全部読んだほうがいいと思います。本当に素晴らしい時間だった!!

 

*1:「なでしこラーメン選手権」の初めのほうとか、グルメ漫画のテンプレをおざなりになぞっているだけという感じがする。

*2:汐見さん、アライメントで言ったらevil/chaosである。(藤本はgood/law)