「私たち二人で一つでしょ!?」「そうだよ!だから早く来い!」~つばな「第七女子会彷徨」~

 

 「傑作」のひと言で済ませてもいいのだが、趣味でやってるブログだしちょっとだけ内容について述べようと思います……。

 

 ただ、前情報がなければないほうが楽しめるタイプの作品だと思うので、すでに読む気になっている人はここから先は読まないほうが良いかもです。(以下は、具体的なネタバレはしませんが、抽象的なネタバレはアリです)

 

 舞台はちょっと変なアイテムや、謎の現象が起きたりする近未来(?)の世界。社会制度や学校の仕組みも不思議なことになっていて、成績を評価される科目に「友達」というものがあったり、死んだ人が平然と教室に通ってきたりする。

 

 そんな世界で「友達」どうしの女子二人、「金やん」と「高木」さんが未来アイテムや超常現象に出会っては、それが巻き起こした騒動に巻き込まれ、解決したり棚上げになったりする、という一話完結のお話が続く。まあ、シュール百合ほのぼの版キテレツ大百科のような作品である。

 

 これがこの作品の第一形態で(第二形態の話はまたあとで)、なにがいいかというとまずギャグが面白い。ちょっとしたお笑いコンビかと思うくらい、主人公二人のかけ合いが笑えます。そして、各話で展開されるSFが、発想力やワンダーの点で素晴らしい。大人向けの作品ですが、大人も問題なく不思議な世界の中へ連れて行ってくれる。さらにそのアイディアをもとに描かれるそれぞれのエピソードも、まあ途中で放り投げるのが芸風みたいなところもあるのですが、それにしてもきれいに落ちていて、「くすっ」となるいいショートショートになっているんですよね。

 

 テキストのセンスも絵も良い。タイトルの英語版までかっこいい。背景にとんでもない量の教養と知力があるのが感じられる。両論併記が望ましいということで、けなすところを考えてみたのですが思いつかない。巻数が10巻しかないことぐらいか。100巻描いてほしかった。

 

 単純に、毒でも薬でもないほのぼのSF漫画としてもすでに満点なのだが、先述したようにこの作品は終盤にひとつ変身を残している。「第七女子会彷徨」は建付けだけではなく実質としても百合作品で、思春期の、おたがい一番仲いいどうしの女子二人の、単なる友達というよりはすこし大きな、執着のようなものを伴う関係を描いているんですよね。

 

 その「百合」成分を物語の終盤にかけて主題として描いていくんですが、その描き方が、同時に、これまで繰り広げてきた単話たち、荒唐無稽でファンタジーなエピソードの数々を、物語的に「こういう意味があったんだよ」と回収していくようなものなのである。

 これにはしびれましたね。「好き勝手想像力の赴くままに描いていて、意味とかはないんだよ」でもぜんぜんCOOLな作品だったと思うんですよ。でも、そうではなく、あえて多少格好を崩してもEMOで物語をまとめにいった、そのスピリットが胸を打ちました。フィクションが単なる気晴らしや慰めじゃなくて、現実に対して仕事をするってこういうつくりのことを言うんですよね。結末も素晴らしいもので、読みながらボロボロ泣きました。

 

第七女子会彷徨|月刊COMICリュウ

 一番問題なのは、なんでこの作品がこんなに無名なのか?ということ。「レヴュースタァライト」とか「少女終末旅行」とか「宝石の国」とか「リコリス・リコイル」とかと並んで(もしくは超えて)オタク人々の会話に上っているべき作品だと思うのですが、理由としては正直アニメ化していないからとしか思えない。

 

 アニメ化したほうがいい気がする。自然とアニメになるとかならないかな。