意外とまじめな恋愛物語~「電影少女」~

 

 「電影少女」を読みました。今日はその感想📼

 

A少年:主人公の親友でイケメン。あまり女の子に優しくない。

B少女:主人公の憧れの女の子。ふわふわ系だけど芯も強い。

C少年:主人公。優しくて甲斐性があるが、察しが悪い。モテない*1

D少女:主人公の後輩→同級生。押しの強い後輩体質。

E少年:あざとい。かわいい系。あんまり登場しない。

 といった登場人物たち(と「ビデオガール」*2)が登場し、基本的にみなひとつ上の人が好きで、ひとつ下の人に好かれている。でもときには見上げる恋に疲れて、すいてくれる下の人のほうを振り向いたり、……でもそのときには下の人もさらにその下の人になびいてたりして、いろいろタイミングが合わなくてやきもきする。……といった感じのラブコメ

 

 ラブコメ、とキーボードの滑りにあわせて書いたけど、「コメ」ではないですね。おおむね登場人物はめちゃくちゃ恋愛に真剣で、「俺にはもう恋愛はできないんだ(トラウマがあるので)」とか「ふだんは優しくできるのに肝心な時に踏み込めないのはただの意気地なしだ」とか「自分から別れを選んだはずなのにまだ好きなのはなぜだろう」とか、実存的な悩みを抱えながら重く恋愛をしている。

 

 ビデオを再生したら、男の子の希望をなんでも叶えてくれる都合のいい存在「ビデオガール」が登場して世話を焼いてくれる! ……という設定の話なのだけど、話の内容はとても真剣で、でも絵の曲線はめちゃくちゃエロくて、でも話自体は何度も言うように真面目なので作品全体として「お色気枠」*3かというとまったくそうではない。

 

 真面目だからといって面白いかというと、……ちょっと収集つかなくなっている部分もあり、また、葛藤を生み続けなければいけないお話の都合上、キャラクターがけっこう「なんでだよ!」「なんで今それをするんだよ!」みたいな行動をバシバシとるので*4、中盤くらいには全員のことをうっすら嫌いになる。*5

 でも、そういった代償を払ってでも、真面目に話を書くって大事なことだよなあ、とも思うようなお話でした。終盤は物語としての統一性より、「愛」をとった「誠実な」終わりかたをしていて*6、(お話はめちゃくちゃだけど)そこも好感が持てるのではないでしょうか。

 

 個人的にはA少年とビデオガールの絡みが好き。

 

 全15巻で、13巻までで第一部、それから登場人物を一新した第二部が始まるのだけど、こちらは打ち切りとなっている*7

 ただこの第二部、テーマもキャラクター造形もすべてが、現代的観点から見ても「面白い」のでおすすめ、……いや、まともな作品の形になっていないのでおすすめはできないのですが、でも、「まあ第一部読んでおけばいいだろ」ではなくそこまで読んだら最後まで読んだほうがいいですよ! と思いました。

 

*1:という設定だが別にふつうにモテてはいる。

*2:とさらにもう一人+その他脇役が出てくるが触れない。

*3:というかほぼ少女漫画なのでこれがジャンプに載っていたんだ、と不思議な気分である。

*4:そのあといっちょまえに自己嫌悪したりする。

*5:主人公を好きな人を大量に登場させて薄めたり、一生くっつかない両想いのカップルをずっともじもじさせている、といったお話、幼稚だなと思うときもあるけど、それはそれでこういった作品のあとを受けて磨かれた、「読者にストレスを与えない」物語技術なんだろうな…とも思った。

*6:一応、作中作の「絵本」を使ってエクスキューズを入れてはいる。

*7:人気作品の「登場人物を一新した第二部」はつねに分の悪い賭けであるということが知られている。