スウェーデンのぼくのなつやすみ(とふゆやすみ)~「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」~

 

f:id:kageboushi99m2:20201229200555p:plain

 僕の好きなアニメに「ガールズ&パンツァー」というものがあって、その登場人物に押田と安藤というふたり組がいるのだけど、その二次創作をするときの元ネタに使えるのではないか、という下心があって見た作品が、こちらのスウェーデン出身で、代表作に「サイダーハウス・ルール」や「HACHI 約束の犬」などがある映画監督、ラッセ・ハルストレムさんの出世作マイライフ・アズ・ア・ドッグ」である。

 

 

十分な食べ物も積まず
犬を宇宙に送るなんて

 主人公のイングマルは犬好きのシャイな少年で、人に見つめられるとコップの飲み物をうまく飲むことができず、手が震えてこぼしてしまう。母親は病気になっていて、イングマルは夏休みのあいだ、田舎の叔父の家に送られることになる。

 そこにはサッカーチームの練習場や子供たちのボクシングリングの上でイングマルになにかと突っかかってくる腕白な男の子、――と思ったら女の子のサガがいて、時は1958年。スプートニク2号にのせられて宇宙に送られた犬のライカはすでに死んでしまっていて、サッカーのスウェーデン代表はワールドカップ準優勝の快進撃、スウェーデン出身のヘビー級ボクサー(たまたまなのかわざとなのか主人公と同名の)イングマル・ヨハンソンは世界王者を決める戦いに挑もうとしていた。

 

f:id:kageboushi99m2:20201229202740p:plain

 そんな主人公の少年の思春期の成長の物語、と要約することもできるのだけど、お話はかなりひとつの中心的な筋を決めないようなしかたで、どちらかというと映像やエピソードの面白い部分をつなげた、といった形で作られている。

 

 キャラクターも、イングマル少年を主人公として、彼の人生の上でそのほかの助役や脇役にそれぞれの役目がある、といった感じではなく、むしろちょっと多極的というか、ある状況に置かれた少年を中心に置いて、それでその周りの人々を視野に収めて、まっすぐではなくクォータービューで描くような、そんな作品になっている。

 

 映画の中で主人公は、彼のために作られた筋書きのなかではなく、個性を持つほかの人々と暮らし、この現実の世界とおなじ条件のなかで、試練を乗り越えて成長する。

 

f:id:kageboushi99m2:20201229211914p:plain

 とてもラブリーな傑作で、傑作なのは間違いないけれど、安定的に高く評価される傑作というよりは、見るひとのなかに印象を強く残すタイプ、激しく感情を揺さぶられるという感じというよりは、見終わったひとのなかにこの映画を思い出す居場所を作ってしまう、というタイプの傑作だと思う。

 

 見て損はない作品なので、年末年始の暇なときに、ぜひどうぞ。