ショートストーリーのまとめ

 

 今日はちょっと時間がない*1のでまとめサイトです。このブログでは過去ブログと称して何個か短いフィクションをpostしてきましたが、そのまとめ。

 

 その前にこうやって連れ出されたのは3か月前のことで、そのときのことはあまりおぼえていない。気づいたら職員室にいて、ふみか先生のフィットの後部座席に乗っていて、一度コンビニで止まって、ふみか先生はレモンティーを買ってくれた。ふみか先生のことを好きになった。そのあと病院についた。

先生は死神なのかもしれないな - タイドプールにとり残されて

 

 ぼくのクラスには姫と呼ばれているお友だちがいた。だれが姫って呼びはじめたのかはぼくは知らないけれど、理由はわかる。そのお友だちはいつも長いふわっとしたスカートを着ていたっていうのと、名字が姫川だったから。

ささやき姫 - タイドプールにとり残されて

 

あるとき、この壁画にまつわる事件が起きる。住民の誰かが壁画に落書きをしたのだ。果てしなく広がる、しかし同時に壁に閉じこめられてもいるこの草原に、ある日突然ひとりの人物が描き足されていた。

城壁都市について - タイドプールにとり残されて

 

 冬の里帰りのあいだじゅうずっと、籐のゆりかごと妹を抱えて、ひまがあれば港町を散歩していた。ある日は、町の東のはずれにある小川に抱きかかえた妹の小さな足をそっとつけさせて、この世には冷たい水の流れがあるのだということを教えた。

灯台で眠れ - タイドプールにとり残されて

 

まあ、それで、僕はベンチに座らないで、屋根のあるギリギリのところに立ってて、スマホをいじってたんですよ。イヤホン出して、音楽とか聴いてたんですね。

 ただ、なんか見られてるなー、って感じはしてて。

 そしたら、急に話しかけてきて。

 「耳なし」って知ってますか? って。

耳なし - タイドプールにとり残されて

 

 正午を過ぎるころ、ぼくらと葬儀団と何重にもくるまれた父は玄関を出発した。まずは山を越えた。それから湿地を泥につかりながらどこまでも歩いた。ぼくはしっかりと手を握っていたので弟ははぐれなかった。

死んだ人は正しく葬ってあげないと幽霊になって出てくるんだよ - タイドプールにとり残されて

 

「棺が欲しいのですが」

 棺職人は私にいくつかの質問をし、それをもとに見積書を作った。差し出された見積書を受け取るまでもなく、私はほんとうのことを言う。

「支払いはできません。……支払うお金がないんです」

棺がなければ葬式はできない - タイドプールにとり残されて

 

すれ違った先生や生徒はだれもすれ違った相手を気に留めなかった。義務をなまける、ということが特別な関心を引くような高校ではなかった。出席してくる生徒はすくなく、先生も個人的な理由でよく授業を休む。

天使は堕天してゆく途中 - タイドプールにとり残されて

 

 二十歳になるのはミチのほうが先だった。誕生日の当日に、僕は適当なプレゼントを買って、電話をしてそこにいることを確認してから、ミチの家に向かった。もうそのときには、死ぬ覚悟はできていたのかもしれない。

殺しは二十歳になってから - タイドプールにとり残されて

 

 私たちとは違って、町野くんにとって言葉は消耗品だった。一度使った言葉は、彼のボキャブラリーのなかから消えてしまう。二度と使うことはできない。

さよならボキャブラリー - タイドプールにとり残されて

*1:嘘喰い」(面白すぎる)とこの動画(面白すぎる)を見るのに忙しい。