精神科での子育て

 

前線の兵士たちが
一瞬のあいだにしなければならないことは
精神科病棟では10年の余裕がある

父さんは学友からの手紙を毎日読み
自分は統合のあいだに隠れて
余った時間で私を育てた

私は十全に育った

精神科病棟には
年上の友達がたくさんいたが
彼らにとって私は友達じゃなく

祈りを書き入れる紙幣で
裏拍から始まるメトロノーム
彼らの人生に現れた天使の生まれ変わりで
下書きには黒すぎる鉛筆で書かれた深い迷い線だった

前線からの手紙を
父さんは
私の知らない引き出しに隠していた

そのあとの私の人生は
社会的地位の上昇を伴う立坑を
地下の世界に向かって下り続けるようなものだった
マンション高層階のゆるくカーブする内廊下を
塹壕の生活と無理やり結び付けた
毎朝違うだれかにブーツのジッパーをあげてもらい
見送って出迎えてくれる彼らの共通点は
元兵士だったということだった
彼らの媚態のなかに
見つける表情に
つねに失望をした

エレベーターを下るとき
私が考えることは

十全に育ったことと
相続のとき手紙を要求しなかったことと

職業的使命感を持って
あの精神病院を
はっきりとした更地にしたこと