読書好きのみなさんへ。はじめて読んだ「本」の思い出はありますか? 今回は初めて読んだ「本」の話をしたいと思うのですが、「本」というものの範囲をどこにセットするかで答えが変わってくる、これは繊細な問いだと思われる。
絵本も含むのであれば「最初」というのはちょっと思い出せない。文字の本(挿絵は許す)であれば、あれかなというのはあるし、児童書ではない大人向けの本であれば確実にこれだと言えるものがある。
でもそれらではなく、今回はその中間のタイプの「本」、説明すると、挿絵以上の絵が描かれていて基本的には絵を見せるんだけど、版型はふつうの単行本に近い、かつ漫画とも普通は形容されない(コマ割り前提ではない)ような子供向けの本があるじゃないですか、あれ系の中で一番最初に買い与えてもらって、何度も何度も繰り返し読み返した思い出の一冊の話である。
かいけつゾロリの大かいじゅう|ポプラ社の新・小さな童話|児童読み物(国内)|本を探す|ポプラ社
それがこれでした。たしか誕生日プレゼントだかクリスマスサンタさんプレゼントだかでもらったものじゃなかったでしょうか。なので子供心にも非常に特別な一品だった。
覚えているあらすじは以下のとおり。
権利を手に入れお菓子のお城を建てたゾロリ・イシシ・ノシシは近隣住民による「景観を破壊している」との苦情をものともせず、お菓子をつまみ食いしながら一城の主として悠々自適の暮らしをしてきた。そんななか、街に怪獣が襲来、怪獣はお菓子のお城を標的として進んでくる。ゾロリたちは怪獣を追い払うためさまざまな策を練るが不発、せめて怪獣がやってくる前に自分たちでお菓子城を食べきろうとするも、城は大きすぎたため、「この辺がちょっと減ったかな」くらいで終わってしまう。その間にも城に近づいてくる怪獣。さあ、どうなってしまう?
子供のころの印象にとても残ったのは、ゾロリが怪獣を撃退するために作ったマシーンのところ。見開き2ページを使ってマシーンの各部分(各部分が怪獣撃退のギミックを備えた、一種のなんでもあり複合マシーンになっている)の機能の説明が書きこまれているのですが、それを読んでいくのがとても楽しかった。
今ではお話系のコンテンツばかり消費している大人ですが、子供のころは全体のストーリーとかはあまり気にしてなくて、こういう細部の書き込みを読み明かしていくことに興奮を覚えるタイプだったんですよね。
なぜそもそもゾロリが城を建てることができたのか?とか、あと話の大オチには過去作を読んでいないとわからない要素があったりした。
べつにそれが気になってねだって買ってもらったりしたことはないのですが、でも、「家にはないけどこのことについて描かれた、別の本が世の中にはあるんだな」という、なんというか海を見るような感じで本の世界を見るようになった、というのも、今後成長してこういう人間になっていく布石のひとつだったような気もしている。