ここで闘う~23-24UEFAチャンピオンズリーグ準決勝2ndLeg レアル・マドリーvsバイエルン・ミュンヘン~

 

 マドリーはベリンガムを左、2トップの位置にヴィニシウスとロドリゴを配置した、今季もっともコンサバな布陣でスタートをセット。守備ではハイプレスがわりと機能し、また攻撃時も深追いしてこない相手2トップの手前で落ちてくるクロース含めた最終ラインがフリーでボールを保持してそこから組み立てることが継続的にできた。

 バイエルンの狙いはトランジションだったと思いますが、それも、めちゃくちゃ脅威になっているかと言われればそうではなかったと思う。試合は不気味なくらいマドリー優位で推移したが、でも点は取れなかった。前半を過ぎて、後半の時間をじりじり消費しても取れなかった。

 

 サッカーというのはいくら優位を作っても結局点が取れなきゃどうしようもないスポーツである。そして経験則ですが、優位を作っても点が取れないチームはしっかりその罰を受けがちなんですよね。

 試合終盤が見えてきた68分、ちょっと人数を前にかけすぎたかなというネガティブトランジションの時に、アルフォンソ・デイビスの理不尽な逆足ミドルを食らってしまいビハインドに。

 

 痛恨の展開だったが、しかし誰も下を向いていなかったのが今季のマドリーの強かさだった。まずアンチェロッティが躊躇なく動き、失点直後のプレーからモドリッチとカマヴィンガが投入される。

 強めた攻勢は5バック化したバイエルンにたいしてすぐには実りませんでしたが、それでも選手たちはどんなプレーのあとにでも、会場にたいしてメッセージを送っていたのが印象的でしたね。

 

 とくに、ちょっとノーチャンスだよなみたいなプレーをしたブラヒムが、すぐさま観客席に顔をあげて、「これを続けていけば大丈夫だから」とばかりに場を鼓舞するジェスチャーをしたシーンなどが印象的だった。まるで、ここでなにが起きるか知っているかのように。

 

 その運命を背負った男が彼でした。この役目がホセルだったことがなんか胸に来て、ホセルが抜かれるたび涙を抑えられなかった。サッカー見てて泣いたのは2016年のホーム清水戦の都倉の決勝弾の時以来である。

 

 ホセルは一流のプレイヤーなのですが、あきらかに「つなぎの人員」としてマドリーにやってきて、都合のいい使われかたをしてきた。点を取ったり、あるいは取れなかったこともあったけど、どちらにせよマドリディスタの関心事としては彼のことは二の次だったわけです。苦労を経て愛するクラブ、レアルマドリーに戻ってきた34歳。来年にはもういらないと言われてチームにいないかもしれない。

 でも今日の試合と2ゴールで、この日のマドリーの14番はマドリディスタの記憶に永遠に刻まれる選手になったのではないでしょうか。おめでとうございます、ホセル。