そこに座っている権利がある

 

 海外のバンドにあまり興味がないかたでも、レッド・ホット・チリ・ペッパー、略してレッチリ(日本独特の略しかたで、外国語のインターネットでは頭文字をとってRHCPと書かれているのをよく見る)を、ひょっとしたら名前を聞いたことくらいはあるのかもしれない。

 

 かつて、ジョン・フルシアンテという伝説的なギタリストが在籍していたが、いわゆる音楽性の違いにより脱退。そのあとはジョシュ・クリングホッファーというこれもまた素晴らしいミュージシャンがかわりにギターを弾いていたのだけど、今回ジョン・フルシアンテがバンドに出戻りすることになり、ジョシュ・クリングホッファーが脱退することになった。そのことについて、ジョシュ・クリングホッファーが出したコメントがあまりにも切ない。

 

「ジョンとバンドは関係を取り戻していて、音楽的にもフリーとの関係を取り戻していると。(…)でもまさかすでに一緒に演奏もしているとは知らなかった。ただ、彼らに告げられた時、彼らへの愛と、彼らと一緒にできたことへの愛で一杯だったから、(…)そこで凍らせてバリアを作ったんだ」

 レッド・ホット・チリ・ペッパーは、ボーカルのアンソニー・キーディス、ベースのフリー、ドラムスのチャド・スミスと、どれも出す音に自分の名前が書かれているような、特別ななにかを持っている天才的な演奏家であり、戻ってくることになったジョン・フルシアンテもおなじようなタイプのギタリストだった。

 一方、ジョシュ・クリングホッファーはどちらかというとクリエイターのようなタイプで、自分を押し出すというよりは、自分に与えられた仕事をこなすミュージシャンだったと思う。

 

彼らは単刀直入に、『ジョンに戻ってくるようにお願いすると決めたんだ』と言った。僕はそこでしばらく静かに座ったままでいて、それから、『驚かないよ』って言ったんだ。『みんなと音楽的にまたはクリエイティブな意味で、(ジョンの復帰が)絶対に不可能だと言えるものを一緒に作ったと言えたら良かったのに』ってね。

 ジョン・フルシアンテがいるレッド・ホット・チリ・ペッパーのほうが、ジョシュ・クリングホッファーのいるレッド・ホット・チリ・ペッパーよりそれらしいというのは非常にわかる。関係者全員が切ない気持ちになるこのin/outはなかなか、……なかなかのものを見せてくれるな、と思った。

 

『普段の僕だったらすぐにこの場から立ち去ったと思うけど、でもこれでこの4人で会うのが最後だと思うと、重みがある。だから、もう少しここに座っていたい』って言ったんだ。

 このひと言が言える人間を尊敬する。人類がいままで発した中でもっとも美しい言葉のひとつだと思う。

 

 「ジョシュ時代」のレッド・ホット・チリ・ペッパーから好きな曲を、シングル曲とシングルじゃない曲からひとつずつ。じゃないほうの曲はこちら。

 

 であるほうはこちら。