名盤になりそこねてきらきらと輝く

 

 Cajun Dance Partyケイジャン・ダンス・パーティと読む)というイングランドのロンドン出身の5人組ロックバンドがいる。2005年に、15歳だった同級生5名で結成し、すぐさま「The Next Untouchable」「Amylase」といった名曲を作り上げ、それをMyspaceにあげたり全年齢クラブで演奏していたらしい。

 

 才能にあふれた人間が「えい!」とざっくり地面を掘ったら金塊が出てきた、というような空気感の名曲である。洗練はもちろんされておらず、微妙に若さが鼻につくような感じはあるのだけど、その辺は完全に無視できるくらい良く輝いている。

 

 青春をそのまま濃縮したような「Amylase」。切迫感と爽快感を足して、体積を保ったまま重さを2倍にしたような、切なくて面白くて素敵な曲ですね。

 

 この才能はゆっくり育つことはできず、すぐに大人たちに見つかってしまう。2008年には9曲入りのファーストアルバム「The Colorful Life」を発売し、国内や海外でライブを繰り広げることになる。サマーソニックにも来たらしい。その後、2枚目のアルバムを出すことはなく、バンドは解散。ウィキペディアによると、中心メンバーのふたりは「ヤック」という名前のべつのバンドを結成。ほかのメンバーは大学に進学したらしい。

 

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 それを踏まえてもういちどデビューアルバムの絵を見ているとなんとなく不吉に見えてくる。メンバーが5人いるのにひまわりが6つだったというのがそもそもかなり悪い相を示していたのではないか。太陽がある方向へひとそろいになるはずが、花の面はそれぞれ違った方向を向いてしまっている。葉は、発育不良になっているみたいにくしゃっとしおれている。

 

 しかし、それもこの世界での話である。Cajun Dance Partyがうまく活動を続けていられたべつの世界では、彼らはTwo Door Cinema ClubとかMistery Jetsとかとイスを争うようなスターバンドになっているらしい。

 

 そこではこの1作目は、彼らの方向性を決定づけた、名刺代わりの名盤とされている。エレクトロニカやダンスの要素も取り入れた2nd、さらにその方向性が進化した3rd、原点に立ち戻りつつも音楽的に洗練された4thの人気もそれぞれに高いのだが、古くからのCajun Dance Partyファンは、やっぱりこのファーストアルバムのキラキラさに、いまも夢中になっているのであった。