労働はかわいい~藤沢カミヤ「ウサギ目社畜科」~

 

[第1話]ウサギ目社畜科 - 藤沢カミヤ | 少年ジャンプ+

 というマンガを読んでいました。

 

 激しい労働に励み、その結果家事がないがしろになっている若いサラリーマン・真司郎の下にやってきたのは、月からやってきたウサギ。しかし月のウサギはじつは働いているあいだじゃないと自らを保つことができない*1、筋金入りの仕事中毒種族だったのである。仕方なく真司郎は月のウサギ・ふわみを月給一円で雇用、家で労働させることにする。そんなハードワーカーたちが織り成すすこしかわいそうな労働コメディマンガがこちら「ウサギ目社畜科」である。

 

 基本的にはなにも難しいものは背負っていない*2、気楽な雰囲気のマンガで、なんかひとにとてもおすすめするようなことではないのですが、でも個人的には性癖に刺さってなかなか好きな漫画でした。ウサギたちが労働を強制されていて、しかもそれを自分が望んだことだとして、脳に労働が刷り込まれてしまっているのがかわいい。働けなくなると、自害しようとするんですよ。

 

 幼少期にこの表紙の絵本を本棚で見かけて、すごい惹かれたけど「これを読んだら歪んでしまう」という防衛本能が働き、結局手に取ることはなかった、という趣旨のツイートを最近見かけたのですが、それに近いことを思ったマンガ作品でした。

 僕はいまは大人で、精神も成熟しているので「まあ大丈夫だろう」と思って読むんですが、「ウサギ目社畜科」をまだ子供のころに見かけたとしたら、まあ読まないほうがいいだろうなと賢察しそっ閉じしたと思われる。

 

 僕もそうでしたが、以下のような特徴に当てはまればこの本を楽しめるかと思います。

  • 現在過酷な労働に従事していない*3
  • キュートアグレッション(かわいいものを見ると攻撃したくなる)がある。
  • 逆張りしていて「ちいかわ」を見ていない。

 

 僕がよくツイートを見ているピエール手塚さんもこのマンガを激押ししていた。それくらいおすすめです。(ポイント還元は終わっているかと思いますが)

*1:働いていない時間が長くなると物理的に溶けてしまう、という設定である。

*2:ギャグも基本的にはウサギが「喜んで自発的に労働する」の1パターンしかない。それで十分ともいう。

*3:ハードワークとはいえ作中で描かれるのは基本的には現実感のないおままごとなので、現実にやってる人には向かないでしょう。

ロケットは月まで行って

 

ロケットは月まで行って
切り離されることなく
帰ってきた
両想いの楽しさ

両想いかどうかわからない
行きの道の切なさ

なぎさ橋を渡った
宇宙に行くものなのになぜか
地上の名前をつけて

夕暮れになっていた
赤い火は失敗の合図だ

僕たちは湾岸公園に行って
そこではだれも救わなかったけれど
なんとか
日が沈む前に帰ってきた

部屋の中では
取り外されたカーテンがソファに
複雑な層をなして
折り重なっていた

最近得た語彙 135個 +α

 

変調
コンサーティーナ
バク
けっこい
流れ山
薬店
ウイロイド
翠雨
そっくりどうぐ
話中音
ドリームキャッチャー
オフチューブ中継
オープンシート
避粉地
リングバックトーン
トリアーデ
赤ちゃん主導離乳食
夏下冬上
DNP
smother
激勧
太平燕
オポネント
ブラブラカー
衛正斥邪
クレ・ド・ポー
Leap day
ポッシュ
バーダックデバッグ
ぐり茶
思い出王手
コゴミ
側対歩
組合立高等学校
quirky
泥田坊
ワイル粒子
深瀬昌久
騙取
エスクロー
ブラケットクリープ
バーゲニングポジション
加食
陶板名画
畦編み
野暮天
グラペット
腹打ち飛び込み
unhinged
口ゴボ
痛税感
朝生菓子
幸先詣
d-pad
よろめき
コイガ
騸馬
津波
rain check
妓生観光
出挙
政治ストライキ
仮囲い
技術士
希望休
壟断
移行期正義
角遂
アーメンブレイク
JNetHack
栽培醸造
稲庭戦法
ワーキャー
イカ
性齢
場所見知り
回付
にこ毛
好きな惣菜発表ドラゴン
フリンジ
名親
貨幣石
呼びタメ
ブロックリーブ休暇
アンノン族
夜光貝
未熟土
タイトル・ドロップ
miscellaneous
デスコン
古蜀
HUD
カルペ・ディエム
Shell Jump
third wheel
メスティン
蜜源植物
忌地
マンパ
克山病
刀伊の入寇
MEO
モラセス
カットアウト
ガストリック
シーグラス
浪淘沙
路側通信
ロングライフ牛乳
testicles
推拿
フッテージ
ハトメ
ワンマイルウェア
ノーアクションレター
転旋
Gladrags
白酒
High Claim
春意
おばんでございます
造就
イカーベイカーパラドクス
海洋恐怖症
務歯
ベタオリ
焙烙
スイスチャード
トレビス
scaffold
デギュスタシオン
封印列車
空閑

 最近ゲットした語彙をただべた張りするという非常にコンテクストの高いブログを数年続けているのですが、今回はその中の一個があまりにも好きだったのでピックアップして皆様にも紹介します。

 

 それがこれ、

 

rain check

 

英語「rain check」の意味・使い方・読み方 | Weblio英和辞書

 野球とか野外コンサートとかのイベントが残念ながら雨天中止になってしまった際にチケットを買った客に渡して、「延期してまたやる日にはこれを見せたら入れますよ」というやつを指す言葉らしいのですすが、よりエモいなと思ったのはそれが転じて日常生活で使われるようになった3の意味。

 人からの誘いをどうしても都合が合わなくて断る時あるじゃないですか。そのときに「レインチェックを渡しますよ」みたいに言うことで、今回はあれだけど次は埋め合わせするから、みたいな意味になるらしいですね。

 

 若いころ、遊ぶ約束をしていた友達が電話一本でドタキャンしてきて、そのまま彼は失踪、長いあいだ会うことはなかったのだけど老境に差し掛かったころにひょんなことから彼と再会し、それまでの人生に起こった数奇な出来事をふたりの男が交互に語り始める*1――。みたいなストーリーの映画1本できますよね、これモチーフで。

 最後のシーンはもちろん、男のひとりが「今日は話疲れちまったな。でもまだ聞きたいことがあるよ。どうだい? これから一杯?」と誘い、もう一人の男が「すまないね。今日は用事があって。また次回にしよう」と答える。二人はにやりと笑って別れる。音楽が鳴って、エンドロールへ。これで決まりでしょうな。

*1:二人はお互いの存在に気づくことはなかったけど、これまでの人生で実はお互いの運命に大きな影響を及ぼし合っていた、みたいなギミックがあるとかなりポップになっていいと思います。

また友達が来た

 

 ことあるごとに「沼津に遊びにおいでよ」とは口に出しつつも、絶対にだれも実際に来ることはないだろう……、と思っていたのだが、最近は沼津の求心力が非常に高まっているらしく、前回に引き続きまた友達が来た。

 

前回:

 

 まずは個人的沼津内で絶対的なスポットとなっている立ち飲み寿司居酒屋「ITA酒場」へ。基本的に混んでいて入れないことも多いお店なのだが、この日は運よくわりとゆったりめ。ある程度おちついて寿司やお酒を飲むことができた。

 

 このお店ではお客のおじいさんが別の女性客に「キャハハ。○○さん、友蔵みたい」「『まる子や』って言ってみて」などと絡まれている場面に遭遇。どうするんだろうな、と思って見ていたら、ちょっと間をためて一閃「誰にだよ」と突っ込んでいたのが面白すぎて友達ととても爆笑してしまった*1

 ふつう人から「まる子や」と言ってみて、など言われたら、「なんでだよ」とか「いわねえよ」とか言っちゃう*2じゃないですか。そこで「誰にだよ」というワードが出てくるのがすごい。たしかにその場に「まる子」という名前の人は(たぶん)いなかったので、言葉の使用として言われてみれば正しいのだが、この方向からの工夫のあるツッコミはふつうは出んて。

 

 そのあとは「matter」というバーへ。雑居ビルの空中階にあるという、地元の人でなければほぼ行くことのないお店なので、ここはバリューを出せたと言えるのではないでしょうか。レアなお酒があり、また友人も割とお酒に覚えがあるほうなので、いいマッチングでした。

 

 翌日は家系ラーメン後、また港へ。この辺で起こったことやした話は前回友人が来たときと全く同じだった。

 

 そのあと、いったん帰宅して時間をつぶしつつ、駅の北口にあるホルモン焼き肉やさん「竜まる」というところに行ったのだが、ここがもうありえないほどおいしくてびっくりしてしまった。

 ホルモン焼肉屋と言えば結局ハラミだったり、ハツだったりタンだったりという、どちらかというと肉に近い質のホルモンを安くいただき、お酒を飲む、というイメージだったのだがここではなにもかもが違っており、白コロやマルチョウなどといったいわゆる「ホルモン」がありえないほどおいしい。食べていて、これまでのセオリーが全然通じないなと感じて新鮮だった。

 

 そのまま彼を見送って、僕はよろよろと家の布団へ……。調子に乗ってホルモンを食べすぎ、体内が油で気持ち悪かったのである。でも美味しかったので次来た人とまた行こう。😋

*1:翌日歩いているときにも「あのおじいさんすごかったな…」と思い出して語った。

*2:しかもべつにいうほどは似ていないのである。本人も言っていたがどちらかというと玉袋筋太郎によく似てた。

リバーブックスと『道具のブツリ』

 

 「リバーブックス」というちいさな書店が沼津にあると知って、行ってみた。「リバーブックス」という名前から狩野川沿いにあるのかなと思っていたが、川からはすこし離れていて、でも、世の中のほかの土地と比較すれば十分川沿いと言えるような場所にあるお店でした。

 

沼津駅からは歩いて15分ほどのところにある

 

 このお店ではクラフトビールが飲める、という情報を先に仕入れていて、「本」というよりは「ビールが飲みたい😋」という若干よこしまな気持ちで訪れたのですが、そんな僕でも本を選ぶ喜びをひさびさに感じることができたいいお店でした。

 

 店内は広くはないが、店主がセレクトしたさまざまな種類の本が並んでいて、また奥にはギャラリースペースがあって店主所蔵のいくつかのアート作品が展示されていた。本の背表紙やそれらのアート作品を眺めていると、ちょうどビール一杯を飲み終えるくらいの時間になるでしょうか。ビールを片手に買う本を選ぶという経験は初めてで、非常に楽しかったです。

 

道具のブツリ|その他|書籍|雷鳥社 Raichosha

 たくさん候補はあって迷いましたが、その中で選んだのが『道具のブツリ』というこちらの本。はさみとか、お盆とか、吸盤とか、身の回りにあるごく普通の道具がその機能を果たしているのはなぜなのか? という点を疑問とし、物理の基本的な道具立てを使ってそれを説明していく、という本である。

 

 シンプルに「へえ~、そうなんだ~」というおもしろさもあるのだが、この道具は物理のこういう性質を使っているので、こういうふうに使うのはいいけれど、こう使ってしまうと痛みが早かったりなど何らかの不具合がありますよ、というふうに、なんか日常の小技集としても読めるのが良かったですね。

 僕もそんなに生活が得意なほうじゃないので、メラミンスポンジでお風呂場をこすってはいけないとか、意外と引っかかってしまう生活の落とし穴がよくわかっていないところがある。それを、理屈込みで学べるのはかなりうれしかったです。シンプルに生きていくのに役に立つ本だ。*1

 

 最近はあんまり本屋で本を買うという習慣もなくなっていたのだが、実際に背表紙を見て手に取って、そこにあるものの中から次の本を選ぶというのは楽しい体験だよなということを再認識しました。子供のころとかはよくやっていて本屋に連れて行ってもらう前日とか楽しみだったものね。予算や買ってくれる冊数の範囲でどれを選んでどれをいったんあきらめるか考えるのも楽しかったし……。

 とりあえずしばらくは、月に一度ほどビールを飲みながら本を選ぶっていうのをひとつのルーティンにしてみようと思いました。

*1:あと、本の形的に本を置く場所が窓の桟しかないうちの家にもぴったりだった。

仕事、幽霊、執行~松本次郎「フリージア愛蔵版」~

 

 松本次郎さんのマンガ作品「フリージア」を読みました。もともと全12巻なのが、愛蔵版で全6巻に合冊されており、さらにそれを電子書籍化するにあたって各巻が(1)(2)と分割されていて12巻に戻っているという回りくどい作品でした。

 

 犯罪被害者による「かたき討ち」が法制化されている社会で、そのかたき討ちを「代理執行」する仕事にスカウトされた男が主人公。この男はいきなり彼女(?)を隣に住むヤカラ風の男に寝取られており、いかにもオタク君という感じなのだが、実際はかなり強く、また精神に異常があってよく幻覚と会話をしているため物々しい雰囲気が出ている。

 

 そんな主人公が犯罪者や犯罪者を守る「警護人」たちとガンアクションをするというお話。

 

 背景には、なんの意味があるのかは本当に不明*1なのだが、戦争が起きていて、そのディテールが作中にさしはさまれている。

 

 お話は出来不出来の差が激しく、また全体を通しての構成も散漫で意味をつかみづらい。基本的にはセンスと雰囲気に惹かれたものだけをとことんまで楽しませる、カルト作品という感じなのだけど、その形容からははみ出る良い部分もいくつかあった。

 ひとつは、出来不出来が激しいとは言ったが、出来のいい話は非常に素晴らしいというところ。この作品で、おもに人間ドラマ的な側面は敵討ちを「執行」される相手側の人々が担うのですが、その人たちの描き方がどれも人間的でいいんですよね…。それを話としてまとめる段階でそこまでうまく行ってない、というところでクオリティの差は出ているのだが、一番クオリティが低い話でも人間たちは非常に特徴的に、愛らしく描かれている*2。そしてそれが作品のもうひとつの要であるバイオレンスを引き立てている。

 

 

 もうひとつはバトルの描写に面白みがあること。コマの形はけっこうシンプルなのですが*3、絵の構図は効果的で、ガンアクション、……というか銃を握ってそれぞれの理由や目的に沿って闘う人間の外面や内面が丁寧に描かれている。戦闘描写以外のところに重心がある作風なのはそうだと思うのですが、それでもバトルも上記のような工夫があって面白いのである。

 

「フリージア愛蔵版 1」松本次郎 [ビームコミックス] - KADOKAWA

 個人的に好きだったのがテロリスト上がりのトシオと、その友人で斜視のシバザキが「執行」対象となる回。だれしもにすすめられるような作品ではないですが、ハマるひとには大きな印象を与える、大傑作である。阿部和重とか、藤本タツキの作品が好きだとこちらも楽しめるかなと思いました。

*1:悪口ではなく作中の雰囲気をいい感じに出している。

*2:なべてマスキュリンな魅力がある。

*3:それがなんとなくパラノイアックだが。

純米吟醸 高尾の天狗 ほか

 

純米吟醸 高尾の天狗

商品紹介 髙尾の天狗 株式会社舞姫 | 株式会社舞姫

 という日本酒を飲んでいた。八王子に住んでいる友人が遊びに来たときに手土産で持ってきてくれたお酒で、その日も飲んだのだけど飲み切れず、残っていたのを改めて一人で飲んでみたら…、まあ!とてもおいしいじゃないですか。

 

 ふくらかで華やかな感じはあるのですが、甘みは多すぎにならないぴったりのところで止めていてシーンを選ばない味わい。お酒のピリッとした感じはなく、とはいえ若干固さも持たせていて飲み飽きないつくりになっている。

 

 八王子の農家に生産委託したお米を原料にした「八王子の地酒」とのこと。なかなかそんなにポピュラーなお酒ではない雰囲気があるので、飲めてうれしいです。

 

利き手じゃないほうの手を怪我したときに起こるいやなこと

 最近利き手じゃないほうの手の指をちょっと怪我(切れて血が出る)したのですが、そこでよくある「あるある」を一個発表していいですか。

 

 ふつう指を怪我したときは利き手側のほうがだるいのですが、逆に利き手じゃないほうを怪我したほうがだるいと思う瞬間がひとつある。ドライヤーのときである。

 ドライヤーのときは利き手でドライヤー機器をもって、利き手じゃないほうで髪をなんとなく梳くじゃないですか、その梳く手の傷のところに温風が当たって傷が乾くと、めっちゃ不快な気持ちになりませんか。

 

湿潤治療(痛くない治療)|横浜市南区【みうらクリニック】胃カメラ、大腸内視鏡、内視鏡検査、経鼻内視鏡

 現代はこういう切り傷は、なるべく幹部の潤いを保つのがセオリー。それを台無しにされてしまう、利き手じゃないほうの手のけが。二度としたくないなと思いました。

 

プレミアリーグ 大一番

シティとアーセナルの引き分けでリヴァプールが本命に?!

 プレミアリーグのDay30、リヴァプールvsブライトンとマンチェスター・シティvsアーセナルを立て続けに見た。対照的な試合でしたね。

 

 リヴァプールvsブライトンは圧倒的に明らかに楽しいゲームだった。ブライトンが先制するのだが、それに対してリヴァプールが攻めまくり、しかも多くの時間帯で攻めあぐねるという感じではなく多彩なブロック攻略を見ることができた。

 それに対してブライトンも、スカッドに限りがある中粘り強く守り、試合の興味をつなぐカウンターもガシガシと繰り出していた。選手たちも熱く、カードが乱れとぶ熱い試合でした。

 

超重要な一戦、シティvsアーセナルについて試合後にシティズンとグーナーが率直に語りました

 そして巷では「塩試合」と悪い意味で話題になったマンチェスター・シティvsアーセナル。個人的には、アーセナルが試合を殺す工夫をしながらも、どうにかプレッシングの時間帯をつくろうとしたところでシティがその努力を跳ね飛ばしたが、シティはシティでアーセナルの強スカッドが全力でドン引いたところを崩すことができず痛み分け…、という印象を持っていて、まあ見ていて楽しすぎるゲームではなかったのはたしかですが、でも内容には富んだ0-0だったのかなという印象である。

 

 これで優勝争いはリヴァプールが一歩抜け出す形になったが、おそらくリヴァプールがいちばんスカッド的には気になる部分が多く、今後格下のクラブに落とす可能性がいちばん高いと思うんですよね。

 そしてこの3チームすべてと試合を残している我らがトッテナム。(3勝ということはもちろんないし)3連敗ということはないんじゃないか*1と思うので、キングメーカーとして役目を果たしたいですね。

*1:ふつうにあって来月泣いている気もするが。