大洗のガルパンじゃないスポット

 

 5年ぶりくらいに大洗に行った。僕は「ガールズ&パンツァー」というアニメのけっこうなファンなので、前回行ったとき、基本的にアニメにまつわるスポットばかりを散策していた。

 なので今回は、ガルパンじゃない大洗のスポットもいくつか見てみようか、という気分になっていた。ガルパンのスポットに関しては、またべつの機会に述べようと思います。

 

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 大洗磯前神社「神磯の鳥居」という場所である。海に飛び出した岩礁に、鳥居が立っていてものすごい波が押し寄せる。ものすごいフォトジェニックスポットであり、実際にここで日の出を撮る観光客がもうもうたくさんいた。スマホでパシャ、とかじゃなくて三脚を立ててスマホじゃないカメラ*1で撮るひともけっこういましたね。

 こんなにもすごげなスポットであるが、前回や前々回訪れたときは存在すら知らなかった。アニメに出てこないとはいえ、こういうのを見逃したらだめだろ……。

 

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 こちらが大洗港先端緑地公園だ。大洗港の埠頭のひとつの先端にある、整備された緑地である。土地勘のあるひと向けに説明すると、茨城県道2号脇にあるふたつの施設、大洗シーサイドステーション(元アウトレットモール)と大洗わくわく科学館のあいだの道を海に向かって行くとここにたどりつく。

 

 とても人工的で、とくになにか面白いものがあるわけではないが、個人的にはけっこう歩いていて楽しい、フィーリングの良い空間だった。船や港湾が好きならもっと楽しめると思う。入口にいちおう「釣り禁止」と書かれた看板があったが、基本的には釣りが行われる場所のようであった。

 

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 ごきげんな像から船を覗くことができる。僕自身もおなじポーズをしてこの像の隣に立った構図の写真も撮ったことは言うまでもない。

 

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 そしてこちら、「悠久」のまぐろ丼だ。まぐろ丼に関して僕は「マグロというおいしげな食材を使っているが、実際はそのポテンシャルを活かしきれていない、はったりの料理」だと思って*2いた。

 

 ただ、ちゃんとした値段がするまぐろ丼を食べてなかったからそういうふうに思っていたんだなあ。

 まぐろってじつは、本当にご飯との相性がいい食材で、なんというか、おいしくて大満足でした。すごかったです。

 

 地元の方に教えてもらったお店で、これ目当てに行列ができるほどの人気メニューだという。ただ、アニメ要素は一切ないので、ひょっとしたらオタクはけっこう見落としている*3のではないだろうか。

 

 ほかのガルパンじゃないスポットはこちら。こちらも味わい深くてよかったです。

 

 歩いていたらあった、おまけのめずらなスポットを載せて今日はおしまい。

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*1:スマホじゃないカメラ」は近い将来「固定電話」「回らない寿司」みたいなレトロニムになると踏んでいる。

*2:カツカレーに関してもおなじことを思っている。

*3:大洗のガルパンスポットは飲食店も多く、聖地巡礼をするとお腹のキャパとの戦いが続くので、なかなかガルパンと関係ない飲食店には知ってても行きにくいという事情もある。

「Go to Italy」の好きなメッセージ

 

 今月分のLINEスタンプ購入予算、まだ余っていますか?

 

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ダイヤモンドクラウン - LINE スタンプ | LINE STORE

 

 余っているなら、ぜひ「Go to Italy」ブランドのスタンプをお勧めしたい。なんとも言えない表情をした人の顔に、なんとも言えないワードがひとつ書かれている、コンセプチュアルなスタンプだ。

 

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 一個買うとこんな感じ。顔はそのままでいろいろな言葉が入っている。これらの語彙をLINE上で使うことができるようになるのだ。決して損な買い物ではない。

 

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 この「Go to Italy」さんというクリエイターは、おなじ発想で大量のスタンプセットを作っている。今回は、そのなかでも僕がとりわけ好きな言葉をセレクションした。ショッピングの参考になれば幸いだ。

 

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Drunk.. - LINE スタンプ | LINE STORE

 まずはこちら、「Dj edm」だ。DJとEDMを同時に表現することでパーティー感がいやおうなく高まっている。しかし、意味を無にして字面だけを見ればなんとなくヘブライ語の祈りの文章のようにも見える。この多義性こそが特筆すべき点である。

 音楽で高まったあとは右下にある「キスされている」のスタンプを使うことで、出来事の流れを生々しく表現することもできる。

 

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レッドアントエッグサラダ - LINE スタンプ | LINE STORE

 「レッドアントエッグサラダ」に収録されている「甘い魚醤とマンゴー」というのもいい響きの言葉だ。東南アジアの盛り場、屋台、蒸し暑い夏の一夜の肉感的な恋愛、……といったものを想起させる。LINEスタンプの域を超えていて、もはや映画である。

 

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チキンとビール - LINE スタンプ | LINE STORE

 「月明かりの下で孤独」、まさに詩を感じるとてもよいフレーズだ。この孤独はやり場のない悲しさであるが、同時に、人間が生きていくうえで絶対に必要なものだというポジティブな意味あいが込められているようにも聞こえる。

 隣りの「そばを友達にしよう」が解決になっているようでなっていないというのも詩想として際だっている。

 

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豊かなクスクス - LINE スタンプ | LINE STORE

 先ほどの「月明かりの下で孤独」が詩のフレーズだとしたら、こちらは写実性と実験性を両立させたポストコロニアルなアフリカ文学のタイトルのようである。治安の悪化した故国を幼少期に離れ、ヨーロッパの旧宗主国アイデンティティに揺れながら生きる主人公は、クスクスの皿が並ぶ食卓のイメージのなかに、歴史のなかの一枚の枯葉である自分自身を見つけるのだ。

 

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バレンタインガールズ - LINE スタンプ | LINE STORE

 ふつうにスタンプとして有用なものもちょこちょこ(1セットに1個くらいは)ある。芸術の言葉とは生活から遊離したものであってはならず、むしろ日常のなかにあふれているものである、……という作者「Go to Italy」さんの美学的態度がそこには反映されているのだろう。

アナキズム・イン・ザ・UKの好きな回たち

 

 アナキズム・イン・ザ・UKは、「ele-king」という音楽メディアで2012年から2015年にかけて連載されていた全36回のコラムである。

 著者のブレイディみかこさんはイギリスで働く保育士で、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』『ワイルドサイドをほっつき歩け――ハマータウンのおっさんたち』『他者の靴を履く――アナーキック・エンパシーのすすめ』といった高く評価された著作でよく知られている。

 

長いときが流れ、「future」は「journey in life」という歯切れの悪いヘヴィな言葉に変わった。すでにライフという旅路をかなり辿ってしまったライドンは、未来というのは漠然とした一続きのものではなく、何ブロックもに分けられた時期の連なりであることを知っている。人生には、永遠のポジティヴとか、永遠のクリーンとかは存在しない。

 バンドのライブのチケットを取ったのだが、問題のある家庭との面談をその日にねじ込まれてしまう、……というロック好きの保育士の日常エピソードから始まる第1回は、伝説的ロックシンガーが討論番組で言ったドラッグについての意見にオーバーラップさせる形で、ドラッグの広まるイギリスの労働者階級の人々の人生のひとコマを描く。

 

 「自らの体験」「職業やこれまでの来歴から生じる自然な、体験への解釈」「それを取り巻く文化や政治の動き」「プライベートな体験ではない、パブリックで特筆性のある出来事」「文化や政治に対する洞察」……といった要素をきれいに織り交ぜて展開させる、ものすごく上質なエッセイになっていて、のこり36回もおおむね同様のクオリティのものが置いてある。

 

 「ありゃいじめだよ。虐待と言ってもいい」
 わたしが言うと、Dはのけぞって大笑いした。
 「ははははは。下層の人間には、上層の人間を虐待する資格がある」
 「ないよ、んなもん」
 「あるの。この国では」

 これは保育園という「キュートな」職場で起きた階級間ヘイトのぶつけ合いエピソードを皮肉的なコミカルさで語りながら、オアシスの作った「Wanderwall」という言葉の意味に思いをはせている。

 

しかし、この貧困ポルノは「同情するなら金をくれ」と言っているポルノではない。彼らは金は貰ってきたのだ。そしてその金と引き換えに、それより大事なものを奪われてしまったのだ。

 この回ではUKの恥部とされたアンダークラスの人々を描いたドキュメンタリー番組と並べて、自ら生活する中で共に過ごした彼らについての実感を語る。ただ、悲惨だけど、それを嘆いて終わりにするだけではない、ヒューマニティーへの信頼みたいなものがコラムの最後では力強くにじんでいて、それが心を打つ。

 

が、どれだけ社会がスーサイダルになろうと、世の中はスカッと終わったりしないし、戦争だってそう簡単に始まるものではない。人というものは残念ながら、なかなか死なないのだ。

サヴァイヴするということは、闘争やファンファーレじゃない。一杯のカップ・オブ・ティーなのだ。

 こちらの回では「カップ・オブ・ティー」というキーワードを印象深く使い、ある女性ミュージシャンの人生と、ある障害を負った元アナキストアンダークラス女性を結びつけ、反抗的に生きることと、その戦闘的な生の帰結がそれほどシンプルじゃないこと、そのやるせなさについてひとつの暫定的結論を出している。

 

 少しでも物を書く人なら知っているだろう。
 自分の生活をすべて晒して書いているように見える物書きにも、絶対に書かないことがあり、実は本人にはそれが一番大きなことだったりする。自分を本当に圧迫していることは、勇ましくキーを叩くネタにはならない。

 

 内容のレベルでも修辞のレベルでも非常に文才がある感じ、――表現がうまいとか、文が適切といった感じではなく、文章がその人だけの色できらきらと輝いているような感じである。圧倒的に才能がある。

 ただ、それでいて、その才能に任せた書き方をしているのではなく、むしろ抑制をきかせ、書かれている内容のシリアスさに見あうリスペクトを払っている。すごいとかそんな次元ではなく、こういうことができるひとが文章を書くことで世界が助かっている、と言って値すると思う。

 

 個人的にいちばん好きだったのがこの回で、2021年のいまウエストハムがはっきりと「強い」と言っていいクラブになっていることをうれしく思った。

 

 そして、一番きつい気分になっていまだにショックが抜けないのがこの回である。

Dadamattoをもっとみんな聞いて

 

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Canneto: il ritorno dei Dadamatto è una roba grossa - NERTO Zine

 

 季節の変わり目になって、家にじっと座っているだけの日でも寒いなと感じて上着を着こんだり、そうしていたら逆に熱いなと思って上着を脱いだりと、自分の体温の時間変化、……体の周期的なリズムみたいなものを意識して過ごすようになりましたね。Dadamattoというあまり知られていない、けど個人的にとても好きなバンドがある。

 

 まあまずはこういった曲を聞いてみてほしい。イタリア出身の3人組で、若干サイケなオルタナティブロックをやっている。それでいてメロディーやハーモニーはきれいめで聞きやすい感じだ。

 イタリア語版のWikipediaによると、これまでに5枚のアルバムを発表していて、2004年からはじめた活動を現在も継続している。

 

 そしてそしてこれも聞いてみて! どうも英語でいうと「Plural」と「Dimension」にあたるような語句の複合語をタイトルにしているこの曲は、その冠に恥じない多次元的な相を我々に聞かせてくれる。

 なんか音楽のことをいろいろ知ってそうなひとが、辺境から出てきたような不思議な音色のロックをやっている。そのうえで歌いあげる感も持っている。Modest Mouseとかと同じ視聴態度で聞けるんじゃないだろうか。

 

 2011年発売の3枚目のアルバムからは「William Shakespeare」も聞きがいのあるいい曲ですよ。ちょっとコスモってるリフレインのシンセサイザーの音がとても好きだし、アップテンポながらメロディー的には渋めに盛り上がっていく構成も良いと思う。

 PVは気持ち悪いが、アーティストとして目指しているビジュアルイメージは一貫している。

 

 「被造物賛歌」、というようなおおきな意味のタイトルをつけられたこの曲も、もし時間があったら聞いてみてください。こちらはキモさは抑えめ、非常にフォークな仕上がりになっていて、メインのはねるようなメロディーはまるで歌い継がれる村歌という感じだ。

 

 そして2017年、最新のアルバムの表題曲となっているのがこれだ。キャリアのほかの曲と比べてもソフトな肌触りであるが、いろいろな工夫が凝らされている奥行きのある曲で、バンドが成熟していることを示している。

 

 ……なんかあんまりだれも聞いていないんだけど僕の考えではとてもいい曲を作っているひとたちだと思うのでもうちょっと売れてほしい。いまのところ、紹介したらみんな「いいね」っては言ってくれるんだけど。

ゴルザ ほか

 

21シーズンJ2第39節 水戸ホーリーホックvsジュビロ磐田

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 ひさびさにJ2の試合を見ていた。まず大森晃太郎選手がジュビロにいるのを知らなかったのでちょっとびっくり。中盤には遠藤選手や今野選手*1もいるので、数年前のガンバ大阪みたいになっていた。

 

 プレイヤーで気になったのは水戸の鈴木喜丈選手。サイズがあって配給ができる左利きCB・DMFという個人的に好きなタイプの選手で、守備時はCBの中央のスペースを担当しながら、攻撃時にはアンカーの位置まで上がるというなかなか珍しい役割を(試合の中盤に差し掛かるころに作戦変更があるまでは)任されていた。

 

 ちょっと自分のやりたいプレーをし過ぎていて、味方を楽にできる感じにはなっていないような気はするけど、これから意表を突いたタイミングで1本目のパスを入れるとか持ち上がるとか、そういうプレーをするようになってきたら楽しみだ。保有しているのはFC東京なのだけど、あそこはけっこう若手のボランチの有望株がいるので、ほかのチームで活躍する選手になるかも。札幌とかもどうですか*2

 

 ジュビロ磐田さん、J1復帰おめでとうございます。

 

定食屋で寂聴の死

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 なにげなく夕ご飯を食べに入った定食屋が深くて良かった。まず、お茶とお茶うけの漬物・佃煮をもらえたんだけどこれがおいしかった。ただ、給仕してくれるおばあちゃんがまじでよぼよぼで、足取りも不確かだったので座って食べるのにかなりの罪悪感があった。(食事が出てくるタイミングで一回近くまで取りに行ったんだけど、それはそれで迷惑そうだった)

 

 店の奥には煙草を吸いながら緑茶ハイを飲んでいるおばあちゃんたちがいて(漏れ聞こえてきた会話によると、そのうち一人はちょうど僕の3倍の年齢だった)、おもに「寂聴の死」について深まった話をしていて迫力があった。

 

 帰り際に「またきてね」と言われたけど、ちょっと勇気がいる再訪になるだろう。

 

ゴルザ

 東海オンエアのこの動画を見ていた。YouTubeでよく見られる「一万円企画」をメンバーが考えてきて、それを審査員と一緒にプレイ、どれが一番きつかったかを競うという内容の動画である。

 「身体の張り」と「メンバーそれぞれ特徴のある創意工夫」が見られる、東海オンエアの王道のような作品でしたね。

 

 動画の終盤で「ゴルザみたいになっている」*3というてつやによる指摘コメントがあって、とくに深掘りはされないまま流れていったのだけど、見ているこっちとしては「ゴルザ」がとても懐かしワードだったので、なつい気分になっていた。

 その気分をだれかと共有したかった、という話でした。

*1:この試合はベンチで、途中から遠藤と交代で出場。

*2:やや高嶺と役割がかぶる説はあるが……。

*3:紙粘土でできたピカチュウをみんなで見る、という流れだったのだけど、たしかにそのピカチュウの頭の部分がゴルザに似ていた。

今夜聞いた曲♬

 

 「♬」は「♪」10個分というルールにします。前回→今夜聞いた曲♪♪♪♪♪♪♪♪♪ - タイドプールにとり残されて

 

1.Super Trouper - ABBA

 謎の復活劇からの新アルバムも聞いていたんだけど、このタイミングで聞きはじめたのは慣れ親しんだ曲でした。

 ABBAをべつに深めて聞いていることはないのだけど、そんな身でいちばん好きな曲はなにかと聞かれるとこれかも。イントロのコーラスのあとの、なんか高いとも低いともつかなくて、どっちのテンションともとれない飄々としたリフが好きです。

 

2.Radio America - The Libertines

3.ナイフ - BUMP OF CHICKEN

4.Superman - Lazlo Bane

5.Run Run - Those Dancing Days

 後ろで流れている電子音風味のリフレインが心地よい。バンド名「Those Dancing Days」もいい感じ詩的でいいですね。

 

6.Bigtime - The Soundtrack Of Our Lives

7.ベイビィ・ポータブル・ロック - PIZZICATO FIVE

 かわいらしいテーマのフレーズが音符で示されるMV最高だった。盛り上げすぎないサビのメロディーや演出も非常に好みです。存在してくれてありがとう曲だ……。

 

8.Lady Stardust - Lisa Miskovsky

9.Something For The Weekend - The Divine Comedy

10.Cigarettes & Coffee - Strange Case

11.Come Home - James

12.Disco 2000 - Pulp

 こういう曲が流れだすと、ひとりで飲む夜もたけなわだ…、という気がする。

 

13.Bad Timing - dEUS

14.エスパー - ミツメ

 個人的にはいろいろな周囲のひとから「いいよ!」「いいよ!」と言われていながらもいまいちよくわかっていなかったバンドで、でもこの曲を聞いてめっちゃハマれて良かった…、と思ったという思い出がある。

 

15.Identikit - Radiohead

16.リサフランク420 / 現代のコンピュー - Macintosh Plus

17.Everyone Says "Hi" - David Bowie

18.Tailwhip - Men I Trust

 いつ聞いてもいい曲だけど、夜が深まって聞くと厚みが増してくる。

芸能の域に到達した「チャンネルがーどまん」

 

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がーどまんの家をクレーンで解体してみた【ドッキリ】 - YouTube

 

 「チャンネルがーどまん」というYouTuberをご存じでしょうか。チャンネル登録者数は現在200万人を超え、日本のYouTube界にひとかどの地位を築いている存在なのだが、このブログを見ている層とはちょっとカルチャーフィットが微妙なので、もしかしたら影も形も聞いたことないというひとが多いかもしれない。

 

 どういった動画を作っているのか? 「がーどまん」と「MY」というふたりの中心メンバーがおたがいの私物だったり家だったりを「ドッキリ」と称して破壊する*1動画である。「ドッキリ」という言葉を使っているがもう毎回ちゃんと破壊していて、取り返しはつかない。

 

 片方(+カメラマン)がもう片方の私物を破壊しへらへらする。それに対して破壊されたほうが、大声で叫びながら体を振り回して怒る。……そのさまが面白い、という動画である。

 

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俺クロコダイルけ?

友達の冷蔵庫を砂でパンパンに詰めてみた【ドッキリ】 - YouTube

 

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友達の家をGW中にゴールデンにしてみた【ドッキリ】 - YouTube

 破壊のプロセスとそれがネタばらしされたときに生じる激怒、そしてその激怒の合間合間に2、3個差しはさまれるたとえツッコミ。――追及する美の様式がかっちりと完成されていて、500年後には能とか歌舞伎くらいの高みにまで到達していてもおかしくない作品たちだ、というのが僕の正直な感想である。

 

 型がしっかりしているからこそ、「外し」がきれいに効いてくる。iPhoneを壊されて怒ろうとするんだけど図書館なので大声を出せない様子を描いたこちらの回などがそのバリエーションのひとつで、白眉の出来である。

 

 途中で友達に仕掛け作業を見つかって「あと10分だけつくらせて」と頼むこちらの回もそんな感じだ。一応、完全なドッキリではなく、なにかひどいことをされるってことは薄々知ってて、そのうえで芸として怒る、というスタンスで作られているので、かわいそうなのが苦手なひとも安心して、……安心して? は見れないかも。

 でも、第一印象や先入観よりは確実に深みと奥行きのあるコンテンツなので、勇気をもって食わず嫌いせず、なんかためしに観てみるか、という気持ちで5本くらい*2観てみてほしい。

 

 「チャンネルがーどまん」は先日、YouTubeでの活動を終えると発表した。

 何回もけんかしてやめようってなった。殴り合いもした。「解散しますとか言ってるやつ*3は一回殴り合ってみ? そのあと星見上げてみ?」。コンビニ弁当をいっしょに食っているだけで幸せだった友達と高級料理を食えたのが嬉しかった。――そういった言葉が語られる最後のトークはとても感動した。

*1:チャンネル内では「潰す」という表現が主に使われる。

*2:様式がかっちりしているほかの芸能と同様、5回くらい見ないと勘所がわかってこないと思う。

*3:とくにYouTuberは一回胸に問いかけてみるべき名言だろう。