芸能の域に到達した「チャンネルがーどまん」

 

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がーどまんの家をクレーンで解体してみた【ドッキリ】 - YouTube

 

 「チャンネルがーどまん」というYouTuberをご存じでしょうか。チャンネル登録者数は現在200万人を超え、日本のYouTube界にひとかどの地位を築いている存在なのだが、このブログを見ている層とはちょっとカルチャーフィットが微妙なので、もしかしたら影も形も聞いたことないというひとが多いかもしれない。

 

 どういった動画を作っているのか? 「がーどまん」と「MY」というふたりの中心メンバーがおたがいの私物だったり家だったりを「ドッキリ」と称して破壊する*1動画である。「ドッキリ」という言葉を使っているがもう毎回ちゃんと破壊していて、取り返しはつかない。

 

 片方(+カメラマン)がもう片方の私物を破壊しへらへらする。それに対して破壊されたほうが、大声で叫びながら体を振り回して怒る。……そのさまが面白い、という動画である。

 

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俺クロコダイルけ?

友達の冷蔵庫を砂でパンパンに詰めてみた【ドッキリ】 - YouTube

 

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友達の家をGW中にゴールデンにしてみた【ドッキリ】 - YouTube

 破壊のプロセスとそれがネタばらしされたときに生じる激怒、そしてその激怒の合間合間に2、3個差しはさまれるたとえツッコミ。――追及する美の様式がかっちりと完成されていて、500年後には能とか歌舞伎くらいの高みにまで到達していてもおかしくない作品たちだ、というのが僕の正直な感想である。

 

 型がしっかりしているからこそ、「外し」がきれいに効いてくる。iPhoneを壊されて怒ろうとするんだけど図書館なので大声を出せない様子を描いたこちらの回などがそのバリエーションのひとつで、白眉の出来である。

 

 途中で友達に仕掛け作業を見つかって「あと10分だけつくらせて」と頼むこちらの回もそんな感じだ。一応、完全なドッキリではなく、なにかひどいことをされるってことは薄々知ってて、そのうえで芸として怒る、というスタンスで作られているので、かわいそうなのが苦手なひとも安心して、……安心して? は見れないかも。

 でも、第一印象や先入観よりは確実に深みと奥行きのあるコンテンツなので、勇気をもって食わず嫌いせず、なんかためしに観てみるか、という気持ちで5本くらい*2観てみてほしい。

 

 「チャンネルがーどまん」は先日、YouTubeでの活動を終えると発表した。

 何回もけんかしてやめようってなった。殴り合いもした。「解散しますとか言ってるやつ*3は一回殴り合ってみ? そのあと星見上げてみ?」。コンビニ弁当をいっしょに食っているだけで幸せだった友達と高級料理を食えたのが嬉しかった。――そういった言葉が語られる最後のトークはとても感動した。

*1:チャンネル内では「潰す」という表現が主に使われる。

*2:様式がかっちりしているほかの芸能と同様、5回くらい見ないと勘所がわかってこないと思う。

*3:とくにYouTuberは一回胸に問いかけてみるべき名言だろう。