逆にファスト映画を見ているみたいだった

 

 仕事で単純作業をしているときは同時に私用のPCで雑学系のゆっくり解説動画を流しているときも多い。なので、たくさんの業者の海のなか、きらりと光るなんかいい感じのゆっくり解説をつねに探しており、そんなチャンネルを見つけるととてもうれしい気持ちになる。

 

ゆっくりニッチな歴史解説 - YouTube

 今日はそんな中からひとつチャンネルをシェアしたいと思います。「ゆっくりニッチな歴史解説」! タイトルを見るとニッチな歴史全般を扱っていそうだが、そうではなく第二次世界大戦ナチスドイツまわりの動画しかほぼない。

 

【ゆっくり解説】アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所、史上最大の犯罪事業。 - YouTube

 たとえばこちらの動画はこのように始まるのだが、アバンタイトルの部分まで見て「おいおいおいおい」「ゆっくり魔理沙だぜ。解説するぜ。……ではないだろうよ」という気分になった。人類の歴史の中でももっとも神妙な態度で聞くことの多いこのような出来事について、まさかふわふわ上下に揺れる謎のお饅頭型キャラクターを見ながら聞くことになるなんてな…、という感じである。

 

 こういった動画のつくり自体に非常に批評的なものはあるのだが、内容はいたって真面目である。とくに笑い要素・かけ合い要素などが入ることもなく、静かなBGMの中でテーマ史が淡々と語られている。あまりに淡々としているので、ときどき酷薄にさえ聞こえるほどである。

 

 どの動画もテーマ選びと、そのテーマに沿って史実を構成していく構成が良くて、めちゃくちゃ面白いです。これはちょっとリッチなコンテンツすぎて、最初は仕事中に流し始めたんだけど、「ちょっとこれは違うな…」となって今では、夜や休日の自由時間を使って「さて、見るか…」と思ってから見るようになっている。映画とかと同じクラスですね。

 

 おすすめの動画をいくつか紹介。よく見ているのがこの「〇〇国のホロコースト」シリーズ。ドイツ国内以外では意外とホロコーストの様子は一様ではなかったという話は聞いたことがあったのだが、実際に国ごとに比較するとなかなかな差があって面白かった。

 とくにノルウェーの回で「北欧諸国では比較的ドイツに降伏後も社会の基盤は残っていたので、強制収用や虐殺などのあんまり無茶なことは現地の法律などもありできなかった。一方東欧諸国ではドイツの侵攻により社会がめちゃくちゃになっていてなんでもできたので、ドイツはユダヤ人を殺したい場合はいったん東欧に強制移動させるのが近道だった」みたいなことが言われていてぞっとした。命運を分ける差と言うのは、地球のどこに住んでいるかにかなり明確に左右されるっぽいですね…。

 

 こちらのような「人」にフォーカスした動画も面白いのでおすすめ。まあテーマがどうかにかかわらず、このチャンネルの動画では歴史の流れだけではなく、そこにかかわった「人」も多く取り上げていてそれが面白いなと思った。顔や来歴、それぞれの性格や人間関係を持つ、なんということのない個人が、歴史の中に巻き込まれ、あるいは主体的にかかわっていきその中で役割(加害者としてだったり、被害者としてだったり、ナチスの活動への抵抗者であったり)を果たす、……という像が描かれているのである。

 

 大学時代一番印象に残った講義も同じくナチスドイツを扱ったもので、同じように歴史と個人のかかわりについて語っていたのを思い出した。こういう切り口が僕はめちゃくちゃ好きなんですよ。

 

 この内容をゆっくりで見るのはどうも…というのも正しい感覚だと思うし、そもそも陽気な話では絶対にないので、おすすめする…というわけにもいかないが、でもだからといってこんなに良いものをおすすめしないというのも変なので、とりあえず、半おすすめみたいな、おすすめしていないでもあるし同時にしてもいる、みたいな感じでこちらのチャンネルをおすすめしたいと思います。

 

 興味がある人は見てみてね。これも最近の動画ですがすごく面白い。ストーリーが数奇すぎて、オチまでしっかり決まっていて完全に映画なので逆に「ナレーションで説明されるファスト映画を見ている?」という気分になる。迷ったらこれを見てください。いやなんでもいいや全部面白い。とにかくすばらしい質のチャンネルです。