酒が入っていたりイベントの後だったりで機嫌が良くなっているオタクと話しているときに、アニメとかマンガなど何らかの作品から「引用」してきたフレーズを聞く機会がある。
個人的にはこういうサブカルorオタク引用句はあまり好きではない。自分の言葉で語ってほしいと思うことが多く、ゆえに自分でもあまりそういうことはしないようにしているのだが、それでも、タイミングが来たらつい言ってしまう引用句というものがある。
今回はそれをいくつか挙げていきたい。
力が入らないんすよ
まず一つ目が「力が入らないんすよ」。
これは昔やっていた「HEY!HEYHEY!」という音楽番組で、まだ若いV6とTOKIOとダウンタウンがチームに分かれてボウリング対決をしていたときに森田剛が発した名言である。
このころなんか森田剛はボウリングにハマっていたらしく、マイボウルや指出しのボウリンググローブを装着、「俺強いっすよ」みたいな感じの雰囲気だしてプレーした。
……しかし、投げるたびに森田はガターにボールを落としてばかり。仲間やダウンタウンに総ツッコミを食らうのだが、それに対して森田が言った言い訳がこれ。
「イヤ、力が入らないんすよ」「力が入らないんすよ…」となんども、そのフレーズだけを情けない表情で連呼する森田剛は本当に面白く、当時テレビで見て衝撃的だった。それ以来、僕もなにか大見えを切って失敗したときには、「力が入らないんすよ…」とつぶやくことにしている。
ハサミ討ちの形になるな
これはジョジョ3部で出てきたセリフで、どういうシチュエーションなのかは若干ネタバレになるので割愛します。ジョジョのセリフを言う痛いオタクにはなりたくないと思っているが、このセリフだけは非常に汎用性が高いのでよく使っちゃうのですよね。
一番良かった使用例は、昔、友達と一緒に旅行に行く当日朝友達が遅刻してこっちだけ予定通りの長距離バスに乗り、そのあと友達が「ごめん。新幹線で向かうわ」とLINEしてきたときのこと。
ここで俺は言ってやったんですよ。「俺はバスでゆっくり長野に向かう。君は新幹線で遅れて長野に向かう。ハサミ討ちの形になるな」
これにより、今自分たちが置かれているのは「待ち合わせ遅れによるロス」というネガティブな状態ではなく、「挟み撃ち」というかなり有利な状態である、と認識を変化させることができる。そのうえ、別々の場所にいても、挟み撃ちという共同作戦を一緒にしているという連帯感を生むことができ、もう合流したような気になってくるのである。遅刻のフォローとしてこの上ない言葉ではないでしょうか。
実際その時の友人も「ありがとう。追いつくわ」などとポジティブな連絡をすぐ返してくれたような気がする。その旅行が、笑顔あふれるいい思い出になったことは説明するまでもない。
今を未来のためだけに使うのは、もったいない
これは恩田陸作の青春小説『夜のピクニック』に出てくるフレーズ。高校3年生の、大学受験本番も終わって、もう後は卒業式があるだけという時期の、最後の全員登校する日に担任の先生がホームルームに時間を設けて、クラスメンバーひとりひとりに「もし何か卒業前に言いたいことがあったら、みんなの前ですこししゃべっていいよ」という時間を設けたんですよね。
最初はみな恥ずかしがったり、周りが何を言うか様子を見ていたりしたのですが、そもそもが受験のプレッシャーから解放された直後で*1、また卒業直前というエモーショナルな空気も手伝って、みんなけっこう熱い、いいことを言っていった、かなりいい時間になった。
その時に僕は、先の「今を未来のためだけに使うのは、もったいない」というフレーズを引用し、「このクラスではみんな、自分の将来のために勉強を頑張っていて、僕もその空気に助けてもらって頑張れました。でもそれだけじゃなくて、行事ごとにはみんなで盛り上がれたし、日々の学校生活もみんなノリが良くてとても楽しくて、『いま』を『いま』として楽しむこともできたのが最高の思い出になりました。ありがとうございます。高校3年生がこのクラスで本当によかったです!」みたいなことを話したのですが、まあこれが先生にもクラスメイトにもとても評判が良かった。*2
多くの人に「あのときのスピーチ、涙があふれたよ」と言ってもらえて満悦だったので、のちに大学に入学してからもよくこの引用句を言うようになってしまった。
今日24時までに提出のレポートがあるが、同時にかなりアツい面子の飲み会に誘われているとき。あと1回欠席したら不合格になる授業がある朝、同時にひどい二日酔いにも見舞われているとき。そして、とくに用事もなく、体調も悪いわけではない日に、受ければわずかに単位取得の可能性があるかもしれないテストに行くか、それともめんどくさいので今回はやめておくか悩んだときなどに……。*3
みなさんも、未来といまをくらべてどちらかをとらなきゃいけないときがあるかと思いますが、そんなときに非常に役に立つフレーズなので、ぜひ、おぼえてみてください。