ナイスカードのタイトル戦決勝戦。だけど、どちらもあまり好きではないチームなので、見る予定はなかった。21-22カラバオカップ決勝戦チェルシーvsリヴァプール。
たまたま夜中目覚めて、結果どうなったかなと思って、暗いなかスマホ点けてみたら、ちょうど0-0で延長前半が終わるくらいだった。これはちょっといいものが見れるかなと思って、そこから見はじめたのがきっかけだ。
それ以前もけっこうな好ゲームだったっぽいけど、PK戦を楽しむにあたっては邪魔である。延長戦も合わせて120分、サッカーを見たあとのPK戦は(単純に疲れてて眠いし)楽しめるようなものではない。PK戦を楽しんで観る方法①は「延長後半くらいから見はじめること」だと言えるだろう。
ほかにも、PK戦を最大限楽しむには②「優勝など、なにかがかかった試合であること」③「強いクラブどうしの対決であること」④「自分の応援しているクラブが絡む試合ではないこと」といった条件が必要だろう。
とくに④は大事だ。PK戦みたいなものに自分の愛するクラブが大きな運命をゆだねるの、いちど経験しました*1があんなの胸がきりきりとして辛いだけですからね。
そして意外と重要なファクターなのが、⑤「PK戦をする両チームのキッカーやゴールキーパーについて、ある程度知っていること」である。PK戦を見る機会が一番多いのはEUROとかアジアカップとか、ワールドカップとかの国際大会なのですが、そこに出てくるチームにはやっぱり知らない選手も多数いて、そうなるとどうしても、ドラマを感じにくいんですよね。
⑤の条件が整えば、「この選手はお調子者だからここで外しそうだ…」とか「こいつは若手だけど肝が据わってるから決めるだろう」とか「このキーパーはふだんは優等生的にうまいけど、こういう『なにか』を起こさなきゃいけない局面で起こせるタイプかというと……」といった勝手な憶測がはかどるのである。これがとても楽しい。
PK戦を楽しんで観る条件⑥は、「PK戦を決して運だと、みんなが思っていないこと」。とくに今回のような、「ケパ投入」みたいなのがあるとわくわくする。
――「ケパ投入」についてざっくり説明すると、チェルシーにはちょっと前までは十分レギュラーだったケパという控えゴールキーパーがいて、その選手が延長後半に「PK戦を任せるために」投入されたんです。
こういうPK戦のための選手交代は、……裏目に出ることも多い賭けである。でも、ケパには頑張ってほしいという思いが傍観者視点からだけどあった。ケパに替わってベンチに退くメンディの表情はかっこよかった。
なにかが起こる、そんな気がした。運命の神さまがたぶんこの瞬間に、この試合の結末を決めて、もう彼自身にも後戻りができない形で時間のなかに手放したのだ。
⑦つ目は、「運命が決めた筋書きのなかで、選手は最大限のパフォーマンスを見せ、観客はそのひとうひとつに沸くこと」、つまり、決まっている運命なんてないかのように振る舞うことである。
――この試合のPK戦は、ひとつひとつのキックにドラマがあってすごかった。選手が一人一人出てくるたびに、決めそうだとか外しそうだとか、適当な憶測を巡らせて楽しんだ。キーパーもキッカーも1戦1戦を工夫していた。そして、重圧に負けた選手はひとりもいなかった。
とくに圧巻だったのはファン・ダイクのキック。ケパがあえてキッカーから見て左側に寄った位置に立って誘うんだけど*2、それをものともせず立っている左側に突き刺したファン・ダイクがスペシャルだった。
まさかの、10人連続全員成功で、PK戦はケパvsケレハーのGK対決へ。……そして。*3
7条件すべてが整い、本当に楽しいPK戦だった。
ケパ選手、……本当に立ち直ってほしい。
*1:神様は我々のほうを見ていた~2019シーズン ルヴァンカップ決勝~ - タイドプールにとり残されて
*2:こういうふうに、あえて偏った位置に立ってあいてを揺さぶるゴールキーパー、水曜日のダウンタウンの「おたがいわざと負けたい八百長対決、地獄説」でJOYとキングコング梶原がやったPK対決(水曜日のダウンタウン八百長PK対決リベンジ!※概要欄の説明を見てからご覧下さい - YouTube)ぶりにみたので感動した。
*3:幕切れ、最初はあまりにもあまりにもなので一瞬笑っちゃったけどすぐに切なさが襲ってきて泣けてきた。こんなに人を打ちのめすのがサッカーだよ。