神様は我々のほうを見ていた~2019シーズン ルヴァンカップ決勝~

 

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 僕の応援している北海道コンサドーレ札幌にとって、ルヴァンカップは長いあいだ縁のない大会だった。総当たりのリーグ戦と並行して、主にJ1のチームに出場資格が与えられるこのカップ戦は、リーグタイトル、天皇杯とならぶ日本国内での3大タイトルだと位置づけられている。

 

 しかし、ご存じのかたも多いかもしれないが、北海道コンサドーレ札幌はJ2に低迷していた期間が長く、そのあいだはただ眺めるだけのどうでもいい大会だった。昇格して出場資格を得てからも、リーグ戦で生き残るのが精一杯だった札幌にとってのルヴァンカップは控え組に実戦経験を積ませるだけの捨て大会だった。飛行機移動による主力の消耗を回避するために、ユース出身の若手で登録メンバーを水増ししてアウェーに乗り込んだり、ゴールどころかシュートすら一本も打てずに敗北するといったみじめな光景をなんどか見てきた。

 

 しかしまさかもう決勝まで来れてしまうなんて。クラブの歴史どころかリーグの歴史でも珍しいくらいのきれいな上昇曲線を見せてくれている。負けたら嫌なのであまり乗り気ではなかったが、でもこれも一興とおもって思い切ってチケットを買うことにした。

 

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 いつもはサッカー好きの先輩や後輩と見にいくことが多いのだが、今回はそんな甘い気分にはなれない試合だったので、ひとりで粛々と観戦することにした。場所は埼玉スタジアム2002

 

 試合の入りは悪くなかった。川崎はいい意味でも悪い意味でも落ち着いていて、とくにジェイに対して神経質になっていなかったので、彼をいったん頼ることで札幌はいい形で攻撃のリズムを作れていた。早い時間帯に菅のスーパーゴールで先制。20分ごろから激しくなってきた川崎の攻撃を、札幌の守備陣は頑張って耐えていたけれど、札幌は守備をちゃんとオーガナイズしているクラブではないので、これは過集中で守っているだけって感じだった。糸が切れてしまうのが怖かった。そしてなんでもないコーナーキックから失点して追いつかれる。

 

 しかし、なんとなく、これはひょっとしたら行けるかもしれないという感覚は、あった。なんか妙に川崎のシュートが外れるのである。何度も決定的なチャンスを作られて、でもなんとかゴールを守れている…。サッカーにはそれをつかさどる神様がいて、たまに片方のチームをひいきしていることがある。神様にも守られながら同点のまま時間が進んでいく。

 

 88分に小林悠に屈辱的な裏抜けを食らって2-1。しかし、試合終了間際、最後のプレーで得たコーナーキックで同点に追いつく。そして延長前半、ペナルティエリア前で決定的な得点の機会をファールで止めた、川崎のCB谷口にイエローカードが提示され……、と思ったらVARで判定が覆って谷口は一発退場になった。おいおい、これはもう俺たちに勝てってことじゃないのか? まじでそのとおりになった。そのプレーで得たフリーキックを福森が直接決めて、3-2、勝ち越す。

 

 しかしそのあとまたしても何でもないコーナーキックから小林悠に決められて3-3の同点。試合はPK戦になる。結果5-4で負けてしまった。正直勝てると思っていた。ここまでの流れからして、PK方式なんて運ゲーに持ち込むことができたら、もうこれは札幌が勝つにきまってるんじゃないかと思った。

 

 あのPKはなかなか直視できないものがある。ちょっと運勝負に持ち込む以前の問題だった。PKだけではなく、プレーの全体にわたって言えることで、もしもうすこし札幌が強くて、勝負の行方を、神様がどうにかすることができるくらい微妙な差に帰着させることができた局面が、もうすこし多かったら、結果も違ったものになっていたかもしれない。

 

 また決勝まで来ましょう。でも、つぎは神様が味方してくれるとは限らないから、もっと強くなって。札幌にはそれができるって信じています。

 

 いい試合だった!