箱舟が足りないか?

 

箱舟が足りないか?
ならばこれを使え!
神様が投げてよこしたのは
絵本の中に入り込める
不思議な靴
これが先祖たちのお話
だから僕たちは
いまの人類とは違う系統の人々

僕は探検隊に生まれ
淡々と船を操った
船を進めるのは
強い感情ではなく惰性
もし沈むとしたら
竜巻ではなく幽霊のせい
水の中からこちらを見つめる
巨きな顔のせい

やめろよ
一度僕たちを見捨てたくせに
一人残らず
名君のような笑顔の君たち
畜生
言葉だけでなく
憎しみとか怒りまで
正しい意味で伝わらないなんて

Uターンした探検隊を
温かな国が出迎える
結局ここに居たいんだよ
箱舟に乗れなかったあの日から
ページの隙間に
色を塗り重ねてできた砦
結局ここに居たいんだ
結局ここに居たいんだ