ぼくを探しに いい感じ

 

 「ぼくを探しに」という有名な絵本があって、子供のころとても好きだった。たぶんどこかの世代で「深い絵本だ!」ということでベストセラーになって、うちの家でも買ったんだけど、そのあとはとくに顧みられないまま本棚にしまわれていて、それを物心ついた直後くらいの僕が見つけたのだと思われる。

 

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 アマゾンのリンクを貼ってもいいのだけど、ちょっと絵も描きたい気分なので今日は絵でもいいですか? こんな感じのパックマンみたいなキャラクターが主人公で、「僕にはどうやら足りないピースがあるっぽいな?」と気づき、「足りないかけらを探しに」の歌を歌いながら冒険するというお話である。

 

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 冒険の果てに、こんな感じのぴったりのかけらと出会い、完全なマルになる。……けど、マルになったらあまりにも早く転がっていってしまうため、たのしく花のにおいをかいだり、虫と競争したりすることができない。「足りないかけらを探しに」の歌も歌えない。結局、かけらはそのへんに放置して、またひとりで生きることを選ぶ。

 

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 というお話である。

 

 続編ではかけら*1のほうが主人公となる。

 

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 かけらはずっと待っているのだけど、なかなかぴったりの相手にはめぐりあえない。角度が違ったり、サイズが違ったり、欠けているところがあまりにも多すぎる相手だったり、……一見相性がよさそうだけど、かけらの扱いかたがよくわかってない相手だったり、などなど。

 

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 一度は完璧な相手にめぐりあって、マルになって転がっていくんだけど、そのうちかけらが成長して大きくなってしまい、「大きくなるなんて知らなかったよ。これじゃあいっしょにはいられないね」「うん…」と振られたりもする。

 

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 花で身を飾ってみたりもしたけれど、逆にシャイなひとには逃げられた。…みたいな回もあった気がする。

 

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 で、あるとき、完全にひとりで完結している「ビッグ・オー」と出会ったことをきっかけに、かけらは自分で転がっていこうと決意する。はじめのうちは体を起こして、倒れて……、の繰り返しなんだけど、そのうち角が取れて丸くなってくる。

 

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 ちょっとちっちゃいが、マルになって転がっていく。……という話である。

 

 キャラがかわいくてわかりやすいお話だったところとかがまず第一に幼いころの僕に刺さったのだと思うけれど、いま思えば、とくにだれともつるまずに、「ひとりでがんばるよ!」というのを好意的に扱っていたところにも惹かれていたのかなと思った。

 やっぱり東アジアの子供向け作品って、一般に「組め」「つるめ」とアピールしがちじゃないですか。生きていくにあたっての、そうじゃないアプローチのほうに、子供ながら親和性を抱いていたのだと思う。

 

 「こいつヤバすぎだろ…」と思っていたビッグ・オーや、転がっているうちにまるくなるかけらに憧れていた幼年時代だが、僕の見立てでは、いまの僕はけっこうそれに近づけているような気がする。

 

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 これくらいにはなれているのではないか。ひきつづき頑張っていきたい。

 

 

*1:ただ、前の話に出てきたのと同一のかけらなのかはよくわからない、といったつくりだった気がする。