最近、会社のお昼休みの時間で髪を切りに行って、帰ってきたら部署のひとが僕を見て「???」となる回があった(かわりにお昼ご飯が食べられなかったので、おなかはぺこぺこになった)のだけど、髪を切ったひとにたいして「髪切った?」というよくなされるあのくだり、とても不毛だと思ったことはありませんか?
「髪切った?」
「あ! 切りました」
~おわり~
となるだけの会話である。あまりにも生産性がなく、このまま効率化の思想が社会に浸透していけば滅びていくのではないかと思う。僕はこのことに中2のころから気づいていて、ひとに「髪切った?」と言われた場合にはそれぞれ違う返しかたをして、なんとか生産性を確保しようとしてきた。
これまでの「髪切った?」に対する返しのなかから、生産性の高かったものをいくつかふりかえっていきたい。
「切ってないです」(否認)
まずは「切ってないです」と否定する、というのがある。これには注意点があって、「いやいや、どう見ても切ったでしょ…」と言われてすぐに前言を撤回すると、意味わからんすぐばれる嘘をつく変なやつ、だと思われるので、いちど否定したら最後までずっと否定し続けなければいけない。
「髪切った?」
「切ってないです」
「え? ……いや、切ってるでしょ」
「切ってないです」
「え、なんで? どういうこと?」
「切ってないです」
「……」
「切ってない」
(中略)
「切ってないです」
「そうなの、かなあ……」
ぎゃくに否定し続けていけば、このように相手が折れてくれることが多い。結局髪がどうこうなんて、ひとに口出しされる筋合いのないパーソナルな出来事なので、基本水掛け論になる。めげずに否定し続けていれば相手も納得せざるをえない。
「私は髪を切りました。あなたも切りましたか?」(反射)
「I'm fine thank you, and you?」方式の切り返しである。「髪切った?」が一方向的な、すなわち権力勾配を持った話しかけであることを相手に悟らせる、すこし攻撃的な返しであり、それゆえにすこし局面は選ぶ。
「うん。髪切ったよ。君も切った?」
「……! そうなんだよ、はじめて、気づいてくれるひとがいた…」
ただ、この返しが大正解となる場合もある。相手も実際に髪を切っていて、(僕も含めた)だれも気づいてくれなかった場合、かなり幸せな空間が生まれ、カップルが成立するまでがある。
相手の目線が自分の髪に行ったら、言われるより先に「髪切った?」ってこっちから聞く。(先制攻撃)
先制攻撃は強力な抑止力となる。「髪切った」って言われた直後に「お前こそ髪切ったでしょ」ということほど間抜けなことはなく、ほとんどのひとがこれ以上髪に言及するのを控えてくれる。
これまでのと違い、これは実際にやるとちょっとウケるので、人生で一回くらいはやってみるとよいと思います。
「いや~、切ろうと思ったんだけど、結局切れなかったんだよね~」(譲歩つき否認)
一番目の派生技だが、「切ろうと思った」というくだりを入れることによって、明らかに切っているのに切っていないという言い張りが通りやすくなる。本当に会話したくない相手にやるにはこれがおすすめである。
「え?」(頭に手を当てる)「ほんとだ! 切られてる…」(崩れ落ちながら)
関係性があるひと相手にやりきれるとウケたりするのだけど、なかなか難しくいままで100%成功したことはない。