ヤングエース発のオリジナル漫画が無料で読める!Webコミックサイト、「ヤングエースUP」に去年四月から連載されていた漫画、「ご飯は私を裏切らない」(←このリンクをクリックorタップしてみよう!)が完結した。とても独特で、面白い漫画だった。
本当はスクロールに合わせてついてくるバナー広告などを設置したいが、僕がこの作品にたいしてできるのはもう一度リンクを張ることくらいしかできない。ここから読むことができます。
主人公は29歳、中卒、恋人いない歴イコール年齢。バイト以外の職歴はなく、そのバイトも、人間社会へのなじめなさからいろいろなところを転々としている。そんな主人公の暮らしが、自意識過剰でシュール、ややイルでだけど、過度に悲観的ではなく、むしろ謎に前向きで、とても美しく繊細な一人称の語りで描かれる。
語られている内容ではなく、その語りかたが魅力の中心となっている作品なので、この11話で作品を終わりにしなければいけない内的必然性はない。なのでファンとしては、もうすこし続きが見ていたかった、というのが本音なのだけど、……けれど、それを悔しがるにしてはとてもきれいに最終回が終わっている。
そのあっさりとした手つきが、ちょっと置いていかれそうな気分になるんだけど、でも、ひとを置いていくのはいつもこの作品はそうなので、そういうふうに終わられるのもかなり悪くないと思えた。
形式としてもよいまとまりかたをした最終話だった。いくらを食してはじまったお話を、いくらを食して終わらせる。話の途中で出てきた「短大へ進学したいかもしれない」という話をここでもうすこしだけ掘り下げるのも良かった。
とくにこの、計算問題を解くシーケンスは人間的すぎて読んでて泣いていた。子供のころはドロップアウトした算数に、検索と、生きていく中で培った勘を頼りにもう一度挑んでみたら、あっけなく全問正解してしまって、そのことを不思議に思いながらも受け入れる。圧倒的に美しい。
ある恵まれない境遇を描きながらも、前向きさとシュールなユーモアをつねに話の軸としてきたこの作品が表わしているのは、たくさんのものを取りこぼしてきた人間が、たくさんの人間が気づくことのない真実を拾い上げる、というなさそうに見えてわりと起こりうる真実なのかもしれない。
いつまでかはわからないが、とりあえずいまの時点ではWebで全話無料で読むことができる。しばらくすれば単行本もおそらく出るのだろう。「ご飯は私を裏切らない」はあなたを裏切らない。ちょっとでもびびっと来たのなら、読んでみるのをお勧めします。
関連:「ご飯は私を裏切らない」 - タイドプールにとり残されて