名前のほうが好きかもしれない

 

 すべての物事において、それそのものよりもそれにつけられた「名前」のほうが好き、という事態がけっこう起きる。ある言葉や言葉のつらなりがある対象を示していて、さらにその言葉そのものが良かったり、言葉と対象のつながりのありかたが良かったりすると、うれしくなってしまう。

 

 最近はよく絵を見ている。まだあんまり絵を見る感性が身についていないこともあって、絵を見るときはまずタイトルを見て、タイトルが良かったら真剣に見ちゃうんだけどそうでもなかったらちらっと見て終わりにしちゃうことも多い。

 

 以下、最近見てよかったなと思う絵です。でもひょっとしたら名前のほうが好きで、絵自体はそれにつられて好きだと思っちゃってるだけかもしれない。

 

カーネーション・リリー・リリー・ローズ

John Singer Sargent - Carnation, Lily, Lily, Rose - Google Art Project.jpg

 ≪Carnation, Lily, Lily, Rose≫。作者はジョン・シンガー・サージェントというアメリカ人。基本的には優美な肖像画を描く画家であったらしく、基本的に描かれている人物を絵のタイトルに冠しているが、この作品では当時のポピュラーソングからタイトルを引用したらしい。

 

ブロードウェイ・ブギウギ

Piet Mondrian, 1942 - Broadway Boogie Woogie.jpg

 ≪Broadway Boogie Woogie≫。ピエト・モンドリアンというだいぶ有名な抽象画家の作品。実は僕は風景画とか肖像画とか歴史画を見てもなにがなんなのかよくわからないのですが、こういう抽象画を見るととても感動、……この感覚が感動なのかはよくわからないんだけどとにかくうれしくなってしまう。ペイントでずっとこういう感じの画像ばっかり作っていて飽きなかった幼少期があるんだけど、それが関係しているのかもしれない。

 

大地のマントを刺繍する

Embroidering the Earth's mantle, 1961 - Remedios Varo

 レメディオス・パロというスペイン人画家の作品。パロさんは文学的なセンスにもあふれた画家だったらしく、ほかにも「精神分析を終えた女」、「蘇生する静物」、「菜食主義の吸血鬼たち」などといった、一貫した作家性を持った詩的な含みのある魅力的なタイトルの絵がたくさんある。絵の内容にも物語性を感じる。