というものが僕の住んでいる東京にはあるらしい。「ささやかな散策を」のときに石神井川の遊歩道に行き当たったのだけど、そのときに「武蔵野の路」案内板を見つけて、それでその存在を初めて知った。
せっかく路がある。ならば歩いてみましょう。ということでとりあえず、「大井・羽田コース」と名づけられているルートの出発地点に来てみた。最寄り駅は京急線の天空橋駅であるが出発地点は天空橋の隣にある弁天橋というところだとされている。近くには開発の中にぽつんと残った鳥居があった。
事前のインターネット・リサーチによると、武蔵野の路というのはかなり未整備で、今後も整備される予定もない、いわば忘れられようとしている路らしい。この出発地点にも、ここが武蔵野の路のターミナル・ポイントであるということを示す標識などはなかった。
20分ほど歩いたところでなんとか案内板を見つけ、ここでやっと自分が武蔵野の路を歩いているということを確認できた。
道はこんな感じ、可とも不可とも言い難い微妙な遊歩道が続く。歩きながら、せっかく270kmを歩くのだから、「そのルートに沿った店で買ったものしか食べたり飲んだりできない」くらいの縛りはあっていいのではないか、という気持ちになってきた。
しかし、地図を見るとうすうすわかるが、このルートに果たして飲食店はあるのだろうか? おしゃれな隠れ家的カフェ、とかは望んでいないけれど……。
不安を抱えつつ、とりあえず進むことにする。スタート地点から呑川を越えるあたりまでは、古びた町工場が象徴的な、大田区の質朴な路地を進むことになる。右手には羽田空港が見え、ときおり、低い空を飛行機が横切る。そのあとは海沿いの遊歩道を歩く。左手に森ケ崎公園というかなりよさげな公園があったが、武蔵野の路の側からはフェンスで完全に隔離されていて入ることができなかった。公園の中の自販機で、ジュースくらい買えればいいなと思ったんだけど。
昭和島から先は完全な実務地区で、はたらくくるまが大量のコンテナを運んでいた。はたらいていないにんげんである僕はかなり肩身が狭かった。
この辺まで来るととてもおなかがすいていたが、もちろん飲食店どころか、コンビニや自販機すらなかった。次の島にはきっとお店があるはず、と思って京浜島にわたり、城南島に渡った。
すると行く手にあったのは中央卸売市場大田市場。
調べてみると市場には一般の人でも立ち入りはできるらしく、場内には場内で取引される食材をふんだんに使ったおいしい飲食店がいくつかあるらしい。大田市場なんて二度とこないだろうからレアリティも高い。やったぜ! と思いながら大田市場に向かおうとして、一応、手前にあった武蔵野の路の案内板を確認してみたら、武蔵野の路は大田市場を大きく迂回していた。ひどい路だ。
うおおお! やったー!! ファミマがあったーー!!! と思って近づいてみたら。
— soudai (@kageboushi99m2) August 21, 2019
なにこれ? pic.twitter.com/iJ4eJF95zU
空腹と渇き、そして武蔵野の路の理不尽への怒りに苦しみながら歩いて、やっと最初のお店を見つけることができた。とりあえずお水を買って、ひと息に飲み干したあと、おにぎりとファミチキを買ったが神の食べ物のようにおいしかった。ありがとう、PORT STORE。
PORT STOREとは何なのか、調べてみたらちゃんとした理由があって面白かったので暇なひとは調べてみたり、調べずに推理してみるとよいと思います。
ちなみにPORT STOREの店頭にはこんな張り紙があって、自分のことを言っているのか?と思った。