ネタバレを含む感想です。おそらく一切ネタバレを踏まないほうがよい楽しみかたになる作品なので、今後見そうな人はこれ以降は読まないでください。
映画『プラットフォーム』予告編
スペインの新鋭監督、ガルデル・ガステル=ウルティアの長編デビュー作となった本作では、貧困、階級、飽食といった社会の縮図を縦構造で描いている。
「プラットフォーム」という映画を見ました。縦にいくつもの部屋がつながっている謎の施設で主人公は目を覚ます。人がそれぞれの部屋に閉じ込められていて、食べ物が配給されるのですが、それは上から順に…、下の方の階層の人は上の食べ残ししか食べられないようになっている。階層は1か月ごとにシャッフルされる。
ある設定を、うまく現実の世界でもあるように落とし込んでとかじゃなくて、けっこう生のままフィジカルなシチュエーションにして、そこに人を配置してその中で展開されるドラマとか人間性を見よう、みたいなそういうタイプの作品である。
個人的にはこのタイプのお話づくりで捨象されてしまう部分に、芸術形式としての物語の特異性というか、面白さがあると思うのであんまり感心していないのだが、まあでも人気のジャンルではあり、「ルールの中でそれをうまく使ってバトル・サバイブするスカッと感」「ルールにあらがって管理者と対峙する勇敢さ」など確立した見せ方も多くある。
この作品では、どちらも選ばず、……もしくはどちらもやんわりやり*1つつ、全体を映像のアートとして見せたかった*2んだよ、というプランだということにしているように見える。あとはそれを高く買うかどうかなのですが、あんまり価値を感じるポイントはなかったかな~というのが率直な印象である。
エンタメとしてみると、たしかに主人公のいる階層とかルームメイトが変わるごとに変化する状況とか、持ち込みアイテムによるドラマとかはシズル感があり面白かったのですが、視聴者に違和感とか不快感を与えて没入させる映像作品のため、感じた楽しさは差し引きゼロだったな…と個人的には感じました。もうすこし優しく作ってくれるか、そこを我慢させるならもうすこし楽しいか、意義深くあってほしかった。