自然観察はバックギャモンをやるよりましだよ~「風が吹くまま」(1999年)~

 

Prime Video:The Wind Will Carry Us (English Subtitled)

 アッバス・キアロスタミの「風が吹くまま」という映画を見ました。なにこの映画?

 

珍しい葬儀を行うというイラン北部の山村に、取材にやってきたTVディレクターが体験する奇妙な日々を描いたドラマ。監督・脚本・編集は「桜桃の味」のアッバス・キアロスタミ。撮影はマハムード・カラリ。音楽はペイマン・ヤズダニアン。出演はマハムード・カラリの元撮影助手で本作が映画初主演のベーザード・ドーラニー、シアダレ村の人々ほか。99年度ヴェネチア国際映画祭審査員グランプリ受賞。

 ……という映画を見たんだけど、「なにこの映画?」と思いました。それなりに人生も進んできて、なにか作品を見た後には自分なりに「なるほど、こういう作品だったのか」と合点がいくように僕もなってきたのですが、これはひさびさの「???」である。

 最近はほとんどそうすることもなくなっていたのですが、見終わってすぐ、「風が吹くまま 映画 意味」で検索してしまった。

 

 村で死にそうなおばあさんがいる、ということで訪れた主人公なんだけど、おばあさんはなかなか死なず、もちろん葬儀は開かれず、無為な日々を過ごす。伝統的な生活を送る村人とのかかわりが描かれるのだけど、心の底からの交流みたいなものはなく、ウルルン滞在記的なハートフル要素があるわけではない。

 ストーリーらしいストーリーはなく、不思議な段差のある構造をした村での暮らしが淡々と描かれていく。

 

 「自然な物事の流れに従ったほうがいいよ。生き急ぐなよ人類」、みたいなことがテーマなのかもしれないけど、やっぱりそういうふうに言葉にしてしまうといろいろなものを置き忘れている気がしてしまう。*1

 すくなくとも見ていて退屈はしなかった。テーマはこういうことです!としてしまうとどうしても出てしまう陳腐さを完全に免れた、けだるい映像の2時間を画面のまえで過ごしただけの特別な体験をできる作品でした。

 

 ただ、何が何だったのかはいや~、わからない。映像や描かれている物事はかなりしっかりコントロールされている感じがあって、「こういうテーマってことにしてあとは適当に撮っとけばそれっぽくなるか」といった方針の映画ではなさそうである。かたくなに画面に映さない仲間のテレビクルー。着信音が鳴って高台へ上るところの、視聴者に伝わってくる不快感。フレームに入ってくる羊や鶏。繰り返しの日々の……基本的に午前中しか映らないところ。そしてクライマックスに一回だけ出てくる夜のシーン。挿入される詩。なにか美学があるんだろうなと思う。……思うけど、それが何かはわかりませんでした。

 

 プライムビデオで見れるので、もし興味があったら見てください。機会があったらこの映画の話をしましょう。……2時間のあいだ楽しめるかは何とも言えないですが、バックギャモンをやるよりはましなのかもしれません。

*1:要約って生き急ぐことですからね。