これも片隅~山田参助「あれよ星屑」~

 

 時は敗戦後。戦地から引き上げてきても家族の元には戻らず、雑炊屋を営み、その他の時間は酒浸りになって過ごしている男と、その彼の「班長」と戦時中の階級で呼び慕う男。その二人を中心に、戦後すぐの時期を生きるさまざまな人々を描いたほのぼの(ほのぼの、……まあこの時代を描いたほかの作品と比べればもちろんほのぼの)日常ストーリーがこちらのマンガ、「あれよ星屑」(作:山田参助)である。

 

 読み終わっての率直な感想から言うとすごく面白かった。また、僕の主観でなく考えても、読む価値のある傑作だと思います。プランとしては、ある時誰もがその話をした名作「この世界の片隅に」とまずは同じで、戦中戦後の人々の姿を現代的なタッチで生き生きと描くところから物語を始めている。

 

 いわゆる、「復員兵もの」というジャンル、戦いと理不尽と不自由の日々を過去にもち、いまはひとまず銃後に戻り平和に暮らしている男が暮らしの中で出会う問題をその力で解決しながら、すこしずつ過去の出来事と向き合っていく、……というとくに男子の心をせつなくくすぐるような物語類型があると思うのですが、それですね。

 「あれよ星屑」にも「班長」が抱える闇があり、それに決着をつける話を語ることがことがそれまでのすべてのエピソードに紐をつけてつなげる役目をしている。その終盤部分は先ほど「ほのぼの」と言ったのが完全に嘘になるくらいショッキングなシーンに繋がっていき終わるのですが、それを飲み込ませてくれるストーリーテリングの厚みがあります。

 

第48回日本漫画家協会賞[大賞]
第23回手塚治虫文化賞[新生賞]
フランス[バンドデシネ批評家協会賞](アジア部門) Prix Asie de la Critique ACBD 2020

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 こういった受賞ステータスが示す通り、いわゆる「文学」的な作品で、たんにLaughを求めているときに読むような作品ではないですが、逆にたんにLaughを求めていない気分の時には絶対に読んだほうがいい大傑作ではないでしょうか。

 作品の趣旨上必要な範囲のオフェンシブな描写や、……これは必要な範囲かは微妙ですがまあすくなくともポルノにはなっていない質の、けっこうな量の性描写があるので苦手な人にとってはいったん注意が必要ですが、まあだとしても弱い心の準備で済む範囲だと思います。

 

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  もう一度言うぜ。大傑作。絶対に読んでくれよな。