「完結した!」というオフィシャルのリリースはキャッチしたものの、ネットでまったく噂を聞かず、ひとつのネタバレも耳に入ることなく、周囲のだれに聞いても「べつに読んでない」とのことだったのでさすがにちょっと不安だった。面白くてもいまいちだったとしても、あの「ジョジョ」の最新部が完結してこんなにオタク界が無風なことってあるんですか……。
ひょっとしたら、本当になにも語ることがないくらい平凡な作品だったのか……?
そんな、ジョジョの奇妙な冒険第8部「ジョジョリオン」を読み終わった。ちょっと本当にさっき読み終わったばっかりで、読んだひとたちのネット上の論調なんかもあまり確認できていないのだけど、……個人的には、とても面白かったし、これまでの部のなかでもっともすぐれている作品だと思った。
「ジョジョ」はこれだけ確固な支持基盤を持っているシリーズなのに、毎回ちょっとずつテイストを変え、……ただ変えるのではなく作品としてのありかたを前にすすめようとしているのが本当に類のないことだと思う。
6部終盤からその兆しはあり、7部で大々的に取り入れられた側面、――人間の運命のままならなさや渋さを中心テーマとして扱う路線を、ポリフォニックな語りを一部取り入れることで前にすすめた、……お話になっているというのが8部の第一印象であり、取り組みはほとんどの場面で成功していると思う。
スタンド能力ははるかにシンプルになり、戦闘描写はよりアイロニカルに、シチュエーション全体のままならなさを前面に押し出すようになった。……そのかわり、正義とか悪とかいう概念はほとんどなくなっているのが良し悪しはべつにしてすごい。とくに4,5部とおなじシリーズとは思えない。
3部がいちばん好きだったり、4部がいちばん好きだったり、5部がいちばん好きで、6部になると「?」となっているひとが8部についていけないならべつにいいのだが、6部、7部を「ジョジョ」というシリーズの正当な進化の道筋だと感じているひとにとっては、8部はこの上ないほど楽しめる作品だと思う。地味に「血統」の話だという立てつけながらこれまでほぼ無視していた「家族」が中心テーマになっているのも面白いですよね。
もうすこし、いろいろ整理してからだと思うのだけど、女性表象とか戦闘のサイコホラー要素とか、新要素として語れそうなところはいっぱいある。……が、現状周りで読んでいるひといないので、もうほんとにみなさん読んでください。7が違和感なく読めるなら8もぜったい面白いです。*1