「ずっと見つめているよ」

 

「ずっと見つめているよ」
最後に一度だけ嘘をついて
神は姿を消してしまった
けれど残された私たちは
もちろん、たまにお菓子をめぐって
けんかをしたりもするけれど
仲直りもちゃんとするし
平和をずっと守って過ごしていた
末の弟が生まれるまでは

弟は姉妹のだれにも似ていない
礼拝所ではつねに正方形の中央に座り
起きてすぐに夢を忘れ
人形の手足を付け替え
鍵穴のなかで騒がしいという
彼だけに聞こえる呼び声を聞いた

「手のひらのなかに謎はあり
開けてはいけないと言われた
扉の向こうには
わかりきった事実
いまさら確かめるまでもない事実があるだけよ」
私たちは弟に言うけれど
弟は嘘をついて
うなずくだけ

神様
あいつは数学が得意だよ
お菓子に夢中な
私たちの目を盗んで
器用な小指を
鍵穴にいれてしまうよ
平和を乱してしまうよ

私たち姉妹だけの言葉で
最後に6行つけ足された祈りを
礼拝所の中央で
弟も
嘘をつきながら唱える
楽園に平日はない