本当はトランプにハートの7があることを

 

本当はトランプに
ハートの7があることを
弟は知らない
教えてあげても
「ええ嘘だって7に
ハートなんてあるはずがないよ」
弟は信じようとしない

本当はトランプに
クラブのJがあることを
妹は知らない
無いほうがおかしいだろうと言っても
「A,K,Qならわかるけど、でもJには…
Jにはクラブなんて似合わないよお」
妹はそう言って笑うだけ

僕ら遊び友達三人きょうだいの
僕が一番先頭で
人生を突っ切っていく
恥ずかしい姿は見せられない
たとえ昨日クラスメイトに
失恋したばかりでも

夕ごはん後9時までの遊びの時間
もう一度僕は弟と妹に
全体像の説明をする
僕たちのもっているカードが
いかに欠け番だらけか

けれど
妹も弟も笑って
僕の言うことを
まじめに聞いてくれない
いいよ
いつか
どっちが正しいかわかると思うけど