6号機と惑星

 

 最近読んで、とっても面白かったインターネット上の読み物を2つ紹介します。

 

 「好きな台の楽しみ方を紹介するだけのブログ」のこの記事は、1年間に登場したパチスロ台をすべてレビューしてみようというでかい企画の準備編に当たる記事である。ただでさえ構想が大きいのに、ひとつひとつの記事の密度もすごい。

 そのなかでも、新世代のパチスロ6号機がどうしてファンからの支持を得られていないのか、そこには出玉試験という大きな壁があり、それを超えるためになされてきたパチスロメーカーの工夫と、それでもどうしても残ってしまう難点がある、……ということをものすごい情報と熱の量で解説しているこの回がとても面白かった。

 

確かに6号機AT機においてシミュレーション試験は完全に無力化されています。上限下限、範囲もなにも関係ありません。完全に素通りです。
その分、実射試験の重みが5号機以前よりも遥かに増しました。メイン基板管理が義務付けられたため、サブ基板でごにょごにょして試験を誤魔化すことはできません。抜け道は限られています。

徹底した対策を立てた上で絶望的な勝負に真正面から挑み、運も味方して見事勝ち取った奇跡。それがリゼロの本来の姿です。『絶望に抗え』とはこのことですよ。カッコよすぎるぜ。

 「高純増ノンストップAT」という、ギャンブルマシンとしてはぜひとも備えたいが、ふつうに実装したら問答無用で試験に落ちてしまう機能をなんとか試験に通す工夫が描かれるところはとても興奮して読んでしまった。

 その上で(しかたないことなのだけど)ゲームとしてはつまらなくなってしまったという負の側面も語られていて、無常感のあるドキュメンタリーとなっている。

 

 こういう、ゲームの低レベル攻略みたいな、ハードルをハックして乗り越えていく系のストーリー、とても好きなんですよね。パチスロはさすがに専門用語が難しすぎるのだけど、中心的な理屈の部分は丁寧に説明されているので、いろいろ調べたりしつつなんとか雰囲気はつかんで読むことができた。

 

 もうひとつのインターネット上の文章がこちら。現役パチンコ店店長のブログで、基本的には自身の仕事に関わる雑感や業況の分析が書かれているのだけど、たまにさしはさまれるエッセイがとても良い。

 ビリヤード業界についてちょっと思いを巡らせたあと、筆者の若いころの思い出が語られる本文。友人がやっていたちょっといかがわしい仕事と、そのやめ時について。なにも確固としたものがつかめないまま青年時代が終わっていくときの切ない、けれど動きようもない、もがくべきでもない感じがドライに描かれていてとても面白い。

 

それから何ヶ月か経って、Mはパチンコスロット稼動に明け暮れた東京から”何も無い”北関東の田舎町へと帰って行った。不思議なもので、数年来つるんでいた仲だったが、その後は一度も連絡をとっていない。

 「羅紗の宇宙に惑星を走らせて」というタイトルも、最初はちょっとビリヤードをそのまま表すには悪い意味でかっこよすぎるのかな、と思ったけれど、ビリヤード球を惑星と言っているのは、質感だったり、プールバーの照明を受けて羅紗の上に影を落としている感じだったり、静止している感じやぎゃくにつつかれて独特の音を立てて滑っている感じをかなり美しく言い当てているように思えて、良いな~、と思った。