ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番のハイライト

 

 ラフマニノフさんというひとが作曲したピアノ協奏曲第3番がとても好きなので、そのなかでもとくに好きな部分をあげていきたい。見出しのリンクをクリックするとその部分から聞けます。(数年後の皆さんと自分へ。リンクが切れていたらごめんなさい。不可抗力です。*1

 

・開幕

 もうこんなの開幕から好きですよね。クラシック音楽なんてそんなに得意でもないし、好きじゃない部分を楽しむ知識や感受性、素養もまだ持ってないので、最初らへんが好きじゃないと「なに聴いてんだ」となって消しちゃうんだから、好きな曲の最初が好きって言うのは、あたりまえのこと。

 主役のピアノが入場する前の、幕を仰々しく引くようなこの短いオーケストラのイントロの部分が本当に好きで、さっそく襟を正す。

 

・第一楽章第一主題

 主題、というのはクラシックの曲のなかで中心となるフレーズとか音の形で、これが変形されたりして何回も曲のなかでくりかえされ、そのたびに「気持ちいい!」ってなるのがクラシックの楽しみかたのひとつだと理解している*2

 この第一主題は、メロディー自体もものすごくリリカルで、高貴な感じがして素敵。この部分では、そっと舞台袖から登場してくる感じが良い。このあとすぐにオーケストラがおなじメロディーを反復する。

 

・急にどうした?

 僕の勝手な妄想ですけど、このラフマニノフのピアノ協奏曲第3番っていう曲は、気分障害チックで偏屈で芸術的なピアノに、バックのオーケストラが理解を示して、あるときは調和するんだけど、あるときはピアノに振り回される、……けれどおたがいを見放すことはなく、離れたりくっついたりして、最後には大団円ではないけれど一応の決着を見つける、そういう音楽だと思っている。

 ふつう、協奏曲といえば独奏する楽器(今回はピアノ)とバックのオーケストラの掛け合いや絡み合い、調和を楽しむものだけど、この曲の独奏楽器はオーケストラに合わせるというよりは彼らを魅力的に振り回す。

 

・壊れちまった第一主題

 鬱期に入ったような暗いピアノソロの最後の場面で、めちゃくちゃな和音の塊になってしまった第一主題が語られる。ここ聴くたびに毎回うるっとなる。

 そのあと、フルート→オーボエ→ホルンのソロパートが入って、おなじ第一主題をきれいな単音で奏でるんだけど、これは壊れてしまった天才のピアノにそれでも温かく寄り添う理解者のように響いて切ない。そのあとのピアノの応答も感動的。さっきうるっときたのなら、ここでひと泣きできます。

 

・第三楽章第一主題

 第二楽章を飛ばして紹介しちゃうのは非常に良くないのですが、第二楽章、僕のリテラシーではいまいちまだよくわからないことのほうが多く、……聞き流しています。もし楽しみ所を教えてくれるかたがいたらLINEしてください。

 さて、リンクが第三楽章の始まりで、それからイントロ部分を挟んで始まる第三楽章の第一主題は、これまでの叙情を引きずりながらも凛々しく、この精神の運命に立ち向かうことを決めた躁鬱病の主人公のドラマのように聞こえる。

 

・第三楽章再現部

 (クラシック音楽のその部分はたいていそういうものですが)最後の楽章の再現部はほんとうに、「あ、この曲を聞いててよかった」という気持ちになる。

 

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 あと、今回まじまじと何度も繰り返して演奏風景を見て思ったのだけど、ピアノって真面目に弾いてたらこんなに汗でびしょびしょになるんですね。ぜんぜん知らなかったし、とても詩的な風景だと思いました。

*1:ソリストはDaniil Trifonov、指揮者はMyung-Whun Chung、オーケストラはl'Orchestre philharmonique de Radio Franceの2015年6月15日の演奏でした。

*2:違うかもしれない。