最近、オーケストラのある音楽を聴くのにはまっており、それ以外のすべての物事(仕事、食事、読書、ゲームなど)にはまっていない。
なので、本来ならいま書いているこの、べつに面白いポイントがあるわけでもないし、そもそも僕本人以外はだれも読んでいない文章を書いているこの時間も、いまはまっているオーケストラのある音楽を聴くことにあてたいのだけど……。
さて、今日話題にしたいのは、19世紀の後半に活躍したロシア人の作曲家、ヴァシリー・カリンニコフの「交響曲第1番 ト短調」である。
オリョーリ県オリョーリ出身。イワン・ツルゲーネフと同郷である。貧しく倹しい警官の家庭に生まれる。
カリンニコフは、2つの交響曲といくつかの付随音楽、そして多数の歌曲を遺した。いずれの作品もみな、ロシア民謡の特徴に染め抜かれている。2つの交響曲、なかでも《交響曲 第1番》は、20世紀初頭に頻繁に演奏された。近年カリンニコフの名声は消えかかっていたものの、交響曲は音源で接することが可能である。
2曲の完成された交響曲こそは、美しい民族的な旋律と、色彩的な管弦楽法ゆえに、カリンニコフの代表作であると言っても過言ではない。特に第1番は旧ソ連時代から録音・上演の機会が多い。どちらの曲もほとんど病床で作曲されたものであるが、生への希望に満ちた明るさが感じられる。おそらく、作曲者は、これらの曲を実際に聴くことはなかったはずである。
34歳で亡くなってしまった、どちらかというと不遇の生涯を送った方で、音楽史的にもめちゃくちゃ有名な人というわけでは(たぶん)ない。Tierでいうと3くらいでしょうか。
ただ、根強いファンがいるらしく、Wikipediaには結構熱のこもった記述があり、とても充実しているわけではないが「交響曲第1番」個別のページまである。
なにをきっかけに聞くようになったのかは思い出せないが僕自身もとても好きな作曲家であり、曲である。
一部分だけ聞いてもらうとしたら、この第2楽章の冒頭部分でしょうか。カリンニコフの交響曲1番は、ほんとうにどの部分をとっても、メロディーやそれが想起させるイメージ、情景がわかりやすく、しかもたんに分かりやすいだけではなくて、フォークや透明さを持ち合わせた美メロで、……まあひょっとしたら音楽的な深みとか構築性・対批評性がない!とか批判されうるのかもしれないけれど、聞いていると「べつにもはやそれはなくて良くない?」となるくらい分かりやすくよいメロディーが何本もやってくるんですよね。
そういうわかりやすさを、商業的にめちゃ売れしている作曲家が確信犯的にやってたら「なんだよ…」となることもあるのだけど、この人は生い立ちがかなり恵まれてないので、それとの合わせ技でめちゃくちゃ高評価できてしまう。不幸なのにこんなにフォークな良メロって作れるんですね……。
おすすめです。