東京の東上野に「元長」というお蕎麦屋さんがある。みかけてから気になってはいたが、店頭に置いてあるイーゼルとか食品サンプルとかの感じが、あまりにも「古いだけのまずい蕎麦屋」という感じだったのでなかなか入る勇気がなかった。ちかくに富士そばもあるので、なおさらである。
しかしあるときなんとなく入ってみて、そしたらとてもお蕎麦がおいしかったのでびっくりしてしまった。かけそば300円~という立ち食いプライスながら、ちゃんとそばの味が感じられる。この時点でかなりうれしいのだけど、さらに、雰囲気もとっても良くて、つゆは徳利と器に分かれて出てくるし、蕎麦湯もあの蕎麦湯を入れるのにだけつかわれている、升と急須を足して二で割ったみたいな容器に入ってて、適当なタイミングで出してくれる。薬味もごま・わさび・ゆず・ねぎと4種類も盛ってくれる。
こんなお店をやるのは資本主義者には無理だろう。魂と粋な心で運営されている、そんなお蕎麦屋さんのようだった。ちなみに食べログは、こういう形態のお店としては驚異の3.49であった。
上野にあるこのお蕎麦屋さん行きたい人いませんか? pic.twitter.com/5MkQB2k7Lp
— soudai (@kageboushi99m2) 2020年6月26日
夕方以降は晩酌メニューもやっているみたいだったので、今回はそれを試してみることにした。250円の下町チューハイやレモンサワーというのは、上野という地勢を鑑みても地域最安値に近い。それに蕎麦屋だからこそできる、そば焼酎のそば湯割りというキラーコンテンツもある。
おつまみも(この時点ではコロナによるメニュー絞りで、実際には半分くらいは出せないメニューだったのだけど、8月くらいにはまた復活するという)よくみるとかなり安い。なす天おろしを頼んだのだけど、注文してから目の前で揚げてくれる仕様で、ちゃんと手間がかかっている。これを200円で食べると、おいしいとかいう以前に申しわけなさが先立ってしまい、あまり味がよくわからない(おいしかったです)。
お酒メニューを追加で頼むと、職人のおっちゃんが「お代は、あとで結構」と言った。うしろに丁寧語を伴わない「結構」、僕ももちろん使ったことないし、日本人のほとんどの人がうまく使えない、ある種のオーラとか気風みたいなものをまとっていないと格好がつかない言い回しだと思うのだけど、きれいに言いまわされていて格好良かった。
おっちゃんとはちょっとだけ政治の話をした。かなり政治にくわしいリベラルなそば職人でした。
また行きたいので、良ければどなたか、いっしょに行きましょうね。